非定型うつ病の方への家族や職場の接し方とは?

アイコン 2016.2.17 非定型うつ病・新型うつ病

非定型うつ病は、みなさんが普通にイメージしているうつ病(定型うつ病)とは大きく異なります。このため、家族や職場の方の接し方も変わってきます。

非定型うつ病は気分の反応性があるため、本人にとって楽しいことはできるのに辛いことはできません。拒絶過敏性があるので、周囲から自分がどう見られているかを恐れて些細なことでひどく落ち込んだり、逆ギレします。

このようなことがあるので、家族や職場などの周囲の方は対応に苦慮することが多いです。本人の性格のせいだと感じてしまい、どうしてもネガティブな感情を持ちがちです。

非定型うつ病の方はどのように接すれば治療的なのでしょうか?ここでは、非定型うつ病の方の周囲の家族や職場の方の接し方について、現実的に考えていきたいと思います。

 

1.非定型うつ病って新型うつ病のこと?

新型うつ病は、明らかに社会に不適応な心理的・人格的課題があるうつ病の集合体と考えられます。非定型うつ病の症状を取りうることが多いことから、家庭環境や社会環境の変化も非定型うつ病の原因といえます。

新型うつ病とはメディアが作りだした言葉で、正式な病気の概念ではありません。しかもその言葉が使われる人や文脈によって、「従来のうつ病とは異なるタイプ」という概念であったり「最近になってみられるうつ病のタイプ」という概念で使われています。

おおよその新型うつ病のイメージとしては、

といったネガティブなイメージでしょう。確かに新型うつ病は、症状をもとに診断基準をみていけば非定型うつ病に含まれることが多いです。しかしながら新型うつ病と非定型うつ病は異なります。

新型うつ病としては、逃避型うつ病・現代型うつ病・未熟型うつ病・ディスチミア親和型うつ病などといった概念が提唱されています。これはうつ病の症状と、現代社会の中での人格や心理の変化と結び付けて考えられた概念です。

これらは、家庭環境や社会環境の変化によって、うつ病の病像が非定型に変化していることを意味しています。

未熟型うつ病では、もともともっているエネルギーは高いにもかかわらず、それをコントロールするための人格が未熟と考えられています。そのエネルギーが攻撃性や行動化という方向に出てしまうのです。

このような意味では、新型うつ病の原因に現代社会の問題が隠れているともいえます。そしてその病像は、非定型うつ病の症状をとりうることが多いのです。

新型うつ病について詳しく知りたい方は、「うつ病の種類(メランコリー親和型と新型うつ病)とは?」をお読みください。

 

2.非定型うつ病の最終的な目標は人格の成熟

社会的な要因もあり人格の成熟が遅れています。非定型うつ病の患者さんは人格の未熟さがみられることが多いですが、裏を返せば人格を成熟させられれば一人前になっていくということです。

非定型うつ病には多くの原因や要因が想定されています。しかしながら多くの方で共通するのが、プライドが高いにもかかわらず自分に自信がないことです。このため、不安を覚えやすい性格の方が多いのです。

自己愛の強さと、それに相反する自己肯定感の低さが、拒絶過敏性などの症状に発展していることが多いのです。私は非定型うつ病の症状の本質は拒絶過敏性にあると考えていますが、その背景には人格形成の未熟さが認められるのです。

人格が未熟ということは、裏を返せば人格が成熟すれば普通に一人前になれるということを意味しています。非定型うつ病(新型うつ病)は未熟者だから使えないというようにレッテル張りにならないようにしてください。

人格の成熟の遅れは、現代社会の変化による部分が大きいです。大きな流れで見れば、平和な社会そのものがモラトリアムの期間を延ばしています。それに加えて少子化や育児環境の変化によるギャングエイジの友人関係の希薄さもあるでしょう。個性や良い面を尊重する、いわゆる「ゆとり教育」方向へのシフトも関係しているでしょう。

このような現代社会の変化によって人格の成熟自体が遅れているのは間違いありません。ですからこれからは、社会でも成熟を支援していく体制が必要になるのです。反対にしっかり成熟すれば、一人前になれるのです。

非定型うつ病の治療のステップは、「非定型うつ病を克服する治療法」をお読みください。これはあくまで患者さんの目線でのステップですが、非定型うつ病の最終的な目標は「人格の成熟」にあることが多いです。そのような視点で、家族や職場はどのようにあるべきか考えていきましょう。

 

3.非定型うつ病で本人が問題意識がない場合の接し方

まずは治療につなげることが大切です。そのためには、客観的に明らかな身体症状からアプローチするのがスムーズです。

非定型うつ病は自分から症状を訴えて受診される方も多く、そのような方はむしろ診断に協力的です。「うつの自分」であることが現状の自分を守る理由づけになっていて、このような患者さんはなかなかよくなりません。ですがこのような方は、治療にはすぐにのっていきます。

しかしながら非定型うつ病は、自分に問題意識を持っていない方も多いです。拒絶過敏性を特徴とするので、自分が病気だと思われることに対して敏感に反応することもあります。ストレートに「あなたは病気だから精神科に行きなさい!」といってしまうと、怒りだしてしまうこともあります。

非定型うつ病で自分に問題を感じていない方には、少しずつ気づかせていくしかありません。それを家族が行う必要はなく、治療につなげることが大切です。そのためには、客観的にみても明らかな身体の症状を指摘することがよいでしょう。

「最近眠気がなかなかとれないみたいだけど、一度睡眠の相談してみたら?」
「最近だるさがひどいみたいだけど、心療内科で相談してみたら?」

といった形です。場合によっては事前に家族が受診して、状況を主治医に相談しておいてもいいでしょう。治療にのせることができれば、主治医が少しずつ治療関係を気づいていきます。

 

4.非定型うつ病の接し方①-生活リズムを保つサポート

家族としては、一緒に望ましい生活習慣を行ってみたり、本人が自発的に行う環境を整えるようにしてサポートしましょう。職場としては、夜勤やシフト制勤務を外したり、定期的な通院に配慮するのが望ましいです。

どのような病気でも言えることではあるのですが、非定型うつ病では特に生活習慣を整えることが大切です。

非定型うつ病では、過眠や過食といった症状があります。いくら寝ても眠気がとれず、そのせいで生活リズムが乱れてしまいます。食欲が増してしまい、むちゃ食いをしてしまうこともあります。

このような食事や睡眠といった生活リズムの乱れが、ただでさえ非定型うつ病に多い鉛管様麻痺とよばれる倦怠感をより強くします。身体がぐったりと重たくなってしまい、更に気分も沈み込んでしまうのです。

ですから非定型うつ病では、生活リズムを一定に保つことが大切です。家族としては、できる範囲でサポートをしてくださると助かります。

患者さん本人には目標をもって生活習慣の修正を行っていただきますが、それを家族が支えようとして細かく管理すると失敗します。本人の拒絶過敏性を刺激してしまいます。一緒に望ましい生活習慣を行ってみたり、本人が自発的に行う環境を整えるようにしてサポートしましょう。

職場としては、

といったことを大事にしてください。決められた生活リズムをつくっていくようにしましょう。非定型うつ病は主治医との関係性も大切な病気です。病院の都合で勤務時間帯にしか予約が取れない時は、できるだけ配慮してください。

 

5.非定型うつ病の接し方②-拒絶過敏性に注意

基本的には本人の努力している部分に目を向けて、肯定的に受け止めてください。

非定型うつ病の患者さんの中心的な症状のひとつとして、拒絶過敏性があります。非定型うつ病の患者さんは、他人から自分を否定されることに対して、過度に敏感になっています。ささいな一言に悪意を感じてしまったり、ちょっと叱られただけで自分の全てを否定されたかのように感じてしまいます。

例えば、家族が「今日は元気そうだね」と何気なくかけた一言が、「いつもは調子悪く手迷惑に思っているんだ!」と思い込んでふさぎ込んでしまったりします。上司に些細な仕事上のミスを指摘をされただけなのに、「自分の能力を否定された」として非常に落ち込んでしまったりします。

ときに逆切れして、周囲に攻撃的になったりします。恋人が忙しくて時間が作れなかっただけだとしても、「自分は嫌われているかもしれない」と落ち込むこともあれば、怒り狂って暴言や暴力を相手に浴びせること もあるのです。

このように、相手から「拒絶」されることに対して非常に「過敏」なのです。できるだけ本人の努力しているところに目を向けて、肯定的に受け止めてください。このような意識は大切ですが、完全に無くすことはできません。何気ない一言が引き金になってしまうのですから。

もしも拒絶過敏性が刺激されてしまったら、本人に対して「そんなつもりじゃない!」と感情的になってしまうと逆効果になります。ますます拒絶されている気持ちを強くしてしまいます。このような時は「非定型うつ病の症状」と考えて、周囲が冷静になりましょう。

その上で本人に以下のようなステップで接していきます。

  1. 肯定的な意味で言ったことを伝える
  2. 話をきく姿勢をみせる
  3. 頓服薬があればもってくる
  4. その場から離れて一人にする

例えば家族の方が「今日は元気そうだね」と声をかけた時の例をあげてみましょう。

まずは「今日は元気そうにみえてうれしかったから伝えたんだよ」と声をかけます。おさまらなければ、「どうして辛くなってしまったの?」と聴く姿勢をみせます。これで落ち着くこともありますが、怒り発作で怒りのコントロールを失ってしまうと止まりません。

頓服のお薬があればもってきて、「気持ちを落ち着けるお薬を置いておくね」といって、その場から離れて一人にしましょう。ひとりにさせて自ら気持ちを落ち着かせる方がよいのです。

多くの患者さんはその後、強い自己嫌悪に襲われます。そっと気持ちを聞いて上げてください。

 

6.非定型うつ病の接し方③-人格の成熟を促す

必ずしも負荷を減らすことがプラスというわけではなく、うまくいく経験を積み重ねて「自分は何とかなる」という感覚をつくっていくことが大切です。

自らを成長させていかなければいけないという気持ちを導いていくことが大切です。ふりかかってきたストレスを上手く対処することができないのです。

それでは人格の成熟を促していくためにはどのようにしていけばよいのでしょうか。人格の成熟を促していくためには、社会での実践の場が必要になります。仕事までは厳しければ、デイケアや作業所などを積極的に利用しましょう。単に負担を減らしたり、休むことが必ずしもプラスではないのです。

非定型うつ病の方の拒絶過敏性の根底にあるのは、強い自己愛(プライド)に見合わない自己肯定感の低さにあります。そのため自分を守るために過剰防衛になってしまうのです。

このためには、少しずつ「何とかなるさ」「心配ないさ」という気持ちをつくっていく必要があります。そのために大切なこととしては、大きく4つあります。

このようにして、自分の生活や仕事の意味を理解することで、論理的につきつめてネガティブに考えないことが大切です。全体の中での今の位置づけを明確にして、過去の経験から何とか乗り越えられるという自己効力感をつくります。できないことは線引きして頼ることができる感覚をもつことで、楽観的に捉えられるように促していきます。

こうして困難を克服した経験を積み重ね、周囲が一緒になって喜びほめていくことで、少しずつ本人の中での自己肯定感が育ってくるのです。

私の担当している企業様でも導入しているところがありますが、ブラザー制度という形で身近な尊敬できる先輩に引っ張っていってもらうのも、人格の成熟を促すひとつの現代的な教育体制かと思います。

 

まとめ

家族や職場の接し方として望ましいのは、本人の自ら成長したいという心を育てていくことです。そのためにはまず、本人を肯定的に受け止めることが大切です。ネガティブな感情をぐっとこらえて、本人の苦しみをうけとめてください。

まずは生活リズムを整える基本的なサポートからはじめて、少しずつ人格の成熟を促していきましょう。そのためには社会生活での実践が大切です。家族の方は、他人ではなく本人の過去と比べてください。職場では、「何とかなる」という感覚がもてるように、困難を乗り越えた経験を積み重ねていきましょう。

自分の中での変化が周囲にわかってもらえることで、本人の本当の意味での自信になっていきます。