原因不明の症状は身体化障害かも?身体化障害の原因と治療

アイコン 2016.8.12 身体表現性障害・自律神経失調症

「手足がしびれる」
「胃腸の調子が悪い」
「めまいがする」
「のどに違和感がある」

こういった様々な症状に悩まされているけれども原因がハッキリしない、そんな方は身体化障害かもしれません。

身体化障害は身体表現性障害に分類される病気で、原因がはっきりとわからない様々な身体の症状が変化しながら長年にわたって続く病気です。

心の病気だと気づくまでに時間がかかり、患者さんは身体の病気と思い込んでいることが多いです。様々な病院にかかるも、なかなか良くならなくて慢性化してしまうことが多いです。

ここでは、身体化障害について詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.身体化障害とは?

身体化障害とは、長年にわたって様々な身体の症状を認める病気です。その原因は医学的にはっきりせず、生活に支障があります。

まずは身体化障害とはどのような病気なのか、お伝えしていきたいと思います。

身体化障害は、身体の検査をしても異常がないにもかかわらず、長期にわたって様々な身体症状が認められる病気です。例えば、胃カメラを行っても異常は何も認められないのに、食欲不振や胃の不快感が認められたりします。

ひとつの症状だけでなく、身体の様々な症状が認められます。確かに患者さんは症状を自覚しているのですが、検査をしても異常がみとめられないのです。

このような症状が続きますので社会生活や日常生活での支障も大きく、人間関係が上手くいかなくなったりして本人も苦しみの深い病気です。このため半分以上の患者さんに何らかの合併症があり、不安や抑うつが認められることが多いです。

身体化症状は、ストレスを無意識に症状としてアピールしているという側面があります。ですから患者さんは、自分の症状や苦しみについて生き生きと語ってくれることが多いです。

様々な病院に受診していることも多く、患者さんも自分の症状についてハッキリと覚えられていないことが多いです。

 

2.身体化障害の原因とは

身体化障害は、遺伝的な関係も指摘されています。身体化症状は抑圧されたストレスの表れでもあり、性格傾向や日々のストレスなどが原因とも考えられています。

身体化障害の原因は、ハッキリとしたものが分かっているわけではありません。しかしながら、いくつか分かっていることもあるのでご紹介していきます。

①遺伝

身体化障害には家族性があるといわれています。身体化障害がみられる患者さんの10~20%では、第一度親族(両親・子供・兄弟姉妹)に同様に身体化障害がみられるという報告があります。

また双生児を比較した研究では、

という結果になっています。双子は似たような環境で育てられることが多いため、環境の影響が少ないと考えられます。一卵性か二卵性で一致率が異なることから、身体化障害に遺伝子の影響があることがわかります。

②性格

身体化障害になりやすい性格というものはあるのでしょうか?

性格は遺伝的な気質に加えて、育ってきた環境や生きていく上での経験から培われていきます。その中で、身体化しやすい性格傾向や特徴が指摘されています。

このような性格の方が、身体化しやすいといわれています。他人からの評価を求めて、それに依存しがちです。時には周りの人を、自分が望むように揺さぶってしまうこともあります。

さらに身体化障害の患者さんの特徴として、

といった点が報告されています。

③ストレス

身体化障害では、ストレスを無意識に抑え込んでしまう抑圧が原因と考えられています。それが抑えきれなくなり、身体症状に表れているという考え方があります。

実際に身体化症状は、ストレスがきっかけに悪化することがあります。

こういった出来事で身体症状が強まることがしばしばあります。不安定な家庭で育っていたり、虐待をうけていたなどの過去のストレスも、身体化しやすい要因となります。教育の乏しい人や貧しい人に多いともいわれています。

そして身体化を誘発するストレスは、日々の様々なものが原因となります。仕事や家庭といった日々のストレスの積み重ねの中で、身体化障害の症状が慢性的に続いてしまうのです。

④年齢や性別

身体化障害では、10代で発症することが多いです。30歳以前で発症して、慢性的に経過していくことが多いです。

身体化障害は女性に多い病気です。身体化障害は、古代エジプト時代から認められた病気です。当時はヒステリー(ギリシア語の子宮を意味する)と呼ばれていて、女性だけにおこる病気と誤解されていました。

生涯発症率をみてみると、女性が1~2%に対して、男性が0.2%となります。少なくとも女性は男性の5倍ほどかかりやすいと言われています。

 

3.身体化障害の症状と診断とは?

身体化障害は、実は最新の診断基準では病名がなくなってしまいました。そのかわりに、もっと広い概念である身体症状症という病気となっています。

身体表現性障害では、身体症状は医学的に説明できないものとしていました。しかしながら身体表現性障害の中には、本当にストレスがかかって身体症状に発展することもあります。これらを区別する意味はあまりありませんね。

ですから身体症状症では、医学的に説明できようができまいが、その症状で苦しんでいれば診断がつけられるようになっています。

ここでは、かつての身体表現性障害の診断基準に基づいて、身体化障害の症状も含めてご紹介していきます。

アメリカ精神医学会(APA)のDSM-Ⅳ-TRという国際的な診断基準をもとに見ていきたいと思います。この診断基準では、AからDまでの4項目を上から順番にチェックしていくことで、身体化障害と診断できるようになっています。

簡単にまとめると、

  1. 30歳前から様々な身体症状が持続し、病院に受診したり、生活の支障が大きいこと
  2. 疼痛症状・胃腸症状・性症状・偽神経学的症状と多岐にわたること
  3. 原因が説明つかないか、明らかに過剰なこと
  4. 意図的にねつ造したものではないこと

順番に、詳しくみていきましょう。

A.30歳以前に始まった多数の身体的愁訴の病歴で、それは数年間にわたって持続しており、その結果治療を求め、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の著しい障害を引き起こしている。

30歳以前となっていますが、多くの患者さんは10代から発症していることが多いです。少なくとも2年以上にわたって身体の様々な症状が続き、そのせいで日常生活や社会生活に支障があります。

人間関係が上手くいかなくなり、生きづらさをかかえながら生きていくことが多いです。不安や抑うつといった精神症状はよく認められ、「消えてしまいたい」といった漠然とした希死念慮をかかえていることもありますが、実際に行動にまでは移さないことがほとんどです。

B.以下の基準の各々を満たしたことがなければない。

  1. 4つの疼痛症状
  2. 2つの胃腸症状
  3. 1つの性的症状
  4. 1つの偽神経学的症状

身体化障害では様々な症状が認められます。厳密には、4つの症状の全てが認められる必要があります。

身体化障害として多い症状は、

これらがあげられます。

C.次の1か2のどちらか。

  1. 適切な検索を行っても、個々の症状は身体疾患または物質の作用によって証明できない。
  2. 関連する身体疾患がある場合、社会的・職業的障害が予測されるものをはるかに超えている。

D.症状は、意図的に作り出されたりねつ造されたりしたものではない。

身体化障害では、その症状の原因や程度が医学的に説明できないことが必要になります。

そして多くの患者さんが治療を求めて何回も医療機関を受診し、検査や治療を受けています。自分自身でサプリメントや鍼灸、なかには宗教的なものに救いを求めていることもあります。

そして医者が身体に明らかな原因がないことを説明しても、なかなか納得しない方が多いです。

ひとつ見分けなければいけないのは、詐病の患者さんです。なかには、自分の利益のために病気を演じる患者さんもいます。

 

4.身体化障害の治療とは?

まずは身体症状が心の問題であることに気づかせる必要があります。精神科のお薬はサポートとして、精神療法を中心に行っていきます。

身体化障害の患者さんは、さまざまな医者にかかっていることが多いです。症状の数だけ病院に通っていることもあります。身体化障害と診断されたら、できるだけ一人の医者のもとで治療を行っていく方がよいです。

身体化障害の患者さんの身体症状は、その多くが身体化症状です。しかしながら、時に本当に身体疾患が認められることもあります。ですから身体診察は簡潔にし、余分な検査は行わず、「これだったらマズイ」という最低限だけを見極めていきます。

そして少しずつ、心が身体症状を生み出していくことに気づいてもらいます。心の問題だと気づけて、ようやく身体化障害の治療が始まります。

身体化障害の治療の中心は、精神療法になります。精神療法には様々なアプローチがありますが、まずはセルフモニタリングをすすめていくことが大切です。

日記などを付けながら、自分のことを目に見える形で把握できるようにしていきます。どんな出来事があり、どんな気持ちになり、どんな症状がでてきたのかを書いていきます。

こうして、症状と出来事の関係に気づけるようにしていきます。そしてその時に生じてきた感情を、まずはそのまま受け止められることを目指していきます。感情は当然のものということに慣れていきます。

それが出来る様になれば、少しずつ出来事を解釈しながら、精神療法をすすめていきます。自分の思考パターンや行動パターンを考えていき、どうしたら上手くやれるのかを考えて実践していきます。

こうして治療をすすめていくのですが、身体化障害でも精神科のお薬(向精神薬)は使っていきます。身体化障害での向精神薬の役割は、

この2つの目的で使っていきます。

ストレスによって身体症状が強まっている場合は、緊張や不安を和らげることで症状が軽減します。うつ状態や不安障害になってしまった場合は、そのせいで身体症状が強くなるという悪循環になります。しっかりと薬物療法を行うことで、これを断ち切る必要があります。

SSRIをはじめとした抗うつ剤を中心に、抗不安薬を補助的に使っていくことが多いです。患者さんの状態によって、気分安定薬や抗精神病薬を使っていくこともあります。

身体化障害の患者さんでは、お薬の使い方を自分で勝手に判断してしまうことも多く、慎重に使っていきます。

身体化障害では、薬を使わずにリラックスしていく方法も有効です。詳しく知りたい方は、「薬に頼らずに不安を解消する4つの方法」をお読みください。

 

まとめ

身体化障害とは、長年にわたって様々な身体の症状を認める病気です。その原因は医学的にはっきりせず、生活に支障があります。

身体化障害は、遺伝的な関係も指摘されています。身体化症状は抑圧されたストレスの表れでもあり、性格傾向や日々のストレスなどが原因とも考えられています。

身体化障害の治療は、まずは身体症状が心の問題であることに気づかせる必要があります。精神科のお薬はサポートとして、精神療法を中心に行っていきます。