身体症状症とは?身体症状症の原因・診断から治療まで

アイコン 2016.8.17 身体表現性障害・自律神経失調症

身体症状症は、新しい診断基準のDSM‐Ⅴで作られた病気になります。

これまでの身体表現性障害にあたる病気が含まれています。身体表現性障害では診断基準として曖昧になってしまうことが多く、身体症状症という病気の概念が作られました。

身体症状症は、身体症状や健康に対して極端な考え方をしたり、それによる行動をとってしまう病気です。つまり、身体の病気に対する認知・行動の異常があるものを広く含めた病気となっています。

ここでは、新しい心の病気の概念である身体症状症について、症状・原因から診断・治療まで詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.身体症状症とは?

身体症状症とは、身体に症状があって、その症状や健康を過剰に心配してしまう病気です。極端に心配や不安をかかえたり、病院に何度も受診するような病気になります。

まずは身体症状症(Somatic Symptom Disorder)とはどのような病気なのか、お伝えしていきたいと思います。

身体症状症は、かつての身体表現性障害にあたる病気になります。身体表現性障害には、診断するにあたって以下のような問題がありました。

身体表現性障害は、身体化障害、心気症、転換性障害、疼痛性障害、自律神経機能不全、身体醜形障害など多くの病気に分けられています。この分類は細かすぎて、オーバーラップしてしまうようなケースが少なくありません。こうなってしまうと医師によって診断がかわってしまうことになり、あいまいとなってしまいます。

また、身体表現性障害では、医学的に説明がつかないことを重視していました。ですが身体的な症状があったうえで、心理的な症状が加わっていることはよくあります。身体の症状で説明できるかできないかという考え方は、「身体は身体、心は心」という二元論的な考え方を強くしてしまいます。

このため、より広くカバーできる病気の概念の方が望ましいと考えられました。こうして作られたのが「身体症状症」になります。

身体症状症は、

この2つを満たす病気が広く含まれます。身体に症状があって、極端に心配してしまったり不安になったり、病院に何度も受診してしまうような患者さんが診断されます。

かつての身体表現障害では、身体化障害疼痛性障害、一部の心気症の患者さんが、身体症状症に含まれます。

身体症状症の有病率は、およそ5~7%ほどと考えられています。多くの患者さんが身体を心配して内科などに受診しています。

 

2.身体症状症の原因とは

身体症状症は、身体感覚の認知の問題や抑圧されたストレス、疾病利得などが原因となります。このため、性格傾向や日々のストレスなどが要因と考えられています。

身体症状症の原因としては、3つの側面から考えることができます。

身体症状症患者さんは、身体の感覚を誤って認知しているといわれています。身体症状症の患者さんは身体の嫌な感覚に対して、敏感なうえに耐えることができません。このように身体感覚のとらえ方が歪んでいるため、身体の病気を過剰に心配してしまいます。

そして身体症状症は、自分の中に抱えている葛藤(ストレス)を無意識に抑え込み、その不安が症状に転換されて出てきているとも考えられています。

そして意識が症状に向くことは、自分の葛藤と向き合わなくて済みます。さらには病気であることから、周囲の人から配慮してもらえるという現実的なメリット(疾病利得)もあるのです。

身体症状症はこのような原因が考えられているため、性格などの本人要因も大きいと、ストレスなどの環境要因が重なって発症します。

①性格

性格は遺伝的な気質に加えて、育ってきた環境や生きていく上での経験から培われていきます。

身体症状症になりやすい性格としては、森田療法を生み出した森田正巳は神経質性格をあげています。いわゆる神経症になりやすいと言われている性格です。

神経質性格とは、

神経質性格は、心配性で内向的という弱気な側面もある一方で、完全主義で理想主義、負けず嫌いという強気な側面もある性格です。

このように共存しているため、弱気な部分を強きな部分が受け入れられなくてストレスを抱えやすい傾向にあります。そして否定的な感情に陥りやすいです。

②ストレス

身体症状症では、ストレスを無意識に抑え込んでしまう抑圧が原因と考えられています。それが抑えきれなくなり、身体的な不安に置き換えられています。

身体症状症は、ストレスがきっかけに悪化することがあります。

こういった出来事で身体症状症が悪化します。身体症状症は、身体の健康に関係する出来事でも症状が動揺することがあります。

こういった出来事があると、一時的に心気状態になることがあります。

③年齢や性別

身体症状症の発症年齢はさまざまです。高齢になると健康不安を抱えるのは普通のことではあるので、身体症状症という診断はつけにくくなります。

高齢者はさまざまな身体症状を合併するので身体症状症も多いかとおもいますが、統計的に目立って多くないのは過小診断によるところが大きいかと思います。

年齢による特徴としては、子供などではひとつの強い身体症状の訴えが認められることが多く、年をとると症状の数が増える傾向にあることです。そして子供では、病気自体を心配することは少なく、かつての心気症の症状は少ないです。

性差としては、女性の方が多いです。男性よりも女性の方が身体の不定愁訴は多く、このため身体症状症も多いです。生理的な周期なども関係しているのでしょう。

 

3.身体症状症の症状と診断とは?

身体症状症の診断をすすめていくには、診断基準を元に行っていきます。精神疾患の診断基準には、アメリカ精神医学会(APA)のDSMと世界保健機関(WHO)のICDがあります。

身体症状症は、DSM‐Ⅴで新たに作られた診断基準で、ICD-10には認められません。

ここでは、DSM‐Ⅴに基づいて診断基準をご紹介していきます。AからCまでの3項目を上から順番にチェックしていくことで、身体症状症と診断できるようになっています。

簡単にまとめると、

順番に、詳しくみていきましょう。

A.1つまたはそれ以上の、苦痛を伴う、または日常生活に意味のある混乱を引き起こす身体症状。

身体症状症では、患者さんが何らかの身体症状を認めることが必要になります。そしてそれは、

このどちらかで、病気として取り扱うレベルのものである必要があります。本当に身体に病気があるかないかは問いません。

これまでの身体表現性障害では、「医学的に説明ができない身体症状」とされていました。身体症状症では、医学的に説明できるかどうかは関係ありません。文字通り、身体症状があるかどうかをみていきます。

身体症状は、頭痛や腹痛といった明瞭なものもあれば、疲労感や不快感といった不明瞭なものもあります。1つの症状のこともあれば、複数の症状のこともあります。

B.身体症状、またはそれに伴う健康への懸念に関連した過度な思考、感情、または行動で、以下のうち少なくとも1つによって顕在化する。

  1. 自分の症状の深刻さについての不釣り合いかつ持続する思考
  2. 健康または症状についての持続する強い不安
  3. これらの症状または健康への懸念に費やされる過度の時間と労力

身体症状症の身体症状では、過剰な健康や身体症状に対するとらわれが認められます。

病気に対してひどく恐れてしまっていたり、ときには検査で問題ないとわかっても「重大な病気が隠れているのではないか」と恐れてしまったりします。

自分の納得する医療を求めてドクターショッピングをしますが、いつまでたっても安心を得られません。医療不信になってしまったり、副作用に過敏になってしまったりします。

身体症状症の患者さんでは、健康や身体症状に対して過剰に不安になってしまう病気です。例えば大きな病気を患い、健康を気にするようになるのは当然のことです。それが行き過ぎていないかどうかで判断していきます。

C.身体症状はどれひとつとして持続的に存在していないかもしれないが、症状のある状態は持続している。(典型的には6か月以上)

身体症状症は、症状がうつりかわってもよいのですが、最低6か月以上に渡って症状が続いている必要があります。

一過性にストレスが身体の症状に出てしまうことは多くの人でみとめられます。

こういった一過性のものは、時間がたつとすぐになくなっていきます。身体症状症では、6か月以上の身体症状に苦しまれていて、慢性化している必要があります。

 

4.身体症状症の治療-薬物療法

身体症状症では、心と身体の両面からお薬を使っていきます。精神的な面については、症状を緩和したり、合併した精神疾患の治療で使っていくことが多いです。

身体症状症の治療では、お薬の治療も重要になります。

身体症状症は、健康や身体症状について過剰に心配してしまう病気です。このため、ストレスから身体症状が実際に生じていることも少なくありません。ですから身体症状症では、

このように心の薬と身体の薬をあわせて使っていきます。

明らかに身体に異常があれば、それを治療するお薬も使っていきます。身体症状がストレスとなり、身体症状症を悪化させていることもあるからです。例えば、

これらのお薬を使っていきます。これらのお薬はターゲットの臓器や器官に働いて、その働きをピンポイントに整えてくれます。このようにして身体症状をコントロールしていくことも重要です。

身体症状症は、「病気へのとらわれ」が強い病気になります。それによってストレスがかかり、不安や緊張が生じています。このため身体症状症では、以下の2つのケースでお薬を使っていきます。

ストレスをお薬でなくすことはできませんが、その影響をお薬で和らげる ことはできます。ストレスは自律神経のバランスを崩し、それによって身体症状を生じます。ですから、ストレスを和らげることで自律神経症状も改善していきます。

うつ状態や不安障害になってしまった場合は、そのせいで病気へのとらわれも強くなるという悪循環になります。しっかりと薬物療法を行うことで、この悪循環を断ち切る必要があります。

具体的なお薬としては、患者さんの症状によっても異なります。身体症状症は慢性的に続くことも多く、そのような時はSSRIをはじめとした抗うつ剤を中心に使っていきます。

そして不安や緊張が強い場合は、抗不安薬を補助的に使っていくことが多いです。患者さんの状態によって、気分安定薬や抗精神病薬を使っていくこともあります。

お薬について詳しく知りたい方は、「薬物療法のカテゴリー」をお読みください。

 

5.身体症状症の治療-精神療法

認知行動療法・森田療法などを行っていきます。疾病利得に注意して、患者さんが自分のストレスに向き合えるようにしていくことが大切です。

身体症状症の原因としては、3つの側面から考えることができます。

これらを意識して、精神療法をすすめていく必要があります。

身体感覚の誤った解釈という要因が強い患者さんは、認知行動療法森田療法などの精神療法が向いています。無意識の葛藤という要因が強い患者さんは、精神分析などの洞察療法を行っていきます。

そして身体症状症の患者さんで気をつける必要があるのが、疾病利得になります。疾病利得とは、病気になるということで自分のストレスに向き合わなくて済むというメリットのことです。

病気であるということに逃げてしまい、自分自身のストレスや困難な課題に目を向けるのを避けてしまうことがあります。こういったものに直面化し、向き合っていけるようにしていく必要があります。

 

6.身体症状症の治療-薬を使わないリラックス法

呼吸法・漸進的筋弛緩法・自律訓練法など、自分自身をリラックスさせる方法も有効です。

自分自身でリラックスする方法もあります。その代表的な方法としては、以下の3つがあります。

リラックスする呼吸法とは、吐く時間を意識した腹式呼吸法です。上手になってくると、呼吸を整えることで不安や緊張を和らげることができます。苦手な社会的状況に直面した時に、呼吸法で乗り切れれば大きな自信になります。

漸進的筋弛緩法とは、リラクゼーションとも呼ばれている方法です。筋肉の緊張状態を知り、それを和らげていく練習をします。慣れてくると、自分自身の緊張状態に気づけるようになってきます。

自律訓練法とは、リラックス状態を自己暗示で作れるようになっていく方法です。リラックス状態をイメージして、それを身体にしみこませていきます。上手になってくると、リラックス状態をすぐに作れるようになっていきます。

いずれの方法も、繰り返し続けていくことで少しずつ上手になっていきます。いわば筋トレのようなもので、すぐには効果が出ないけれども継続していくことで少しずつ効果が出てきます。

詳しく知りたい方は、「薬に頼らずに不安を解消する4つの方法」をお読みください。

 

まとめ

身体症状症とは、身体に症状があって、その症状や健康を過剰に心配してしまう病気です。極端に心配や不安をかかえたり、病院に何度も受診するような病気になります。

身体症状症は、身体感覚の認知の問題や抑圧されたストレス、疾病利得などが原因となります。このため、性格傾向や日々のストレスなどが要因と考えられています。

身体症状症では、心と身体の両面からお薬を使っていきます。精神的な面については、症状を緩和したり、合併した精神疾患の治療で使っていくことが多いです。

身体症状症の精神療法としては、認知行動療法・森田療法などを行っていきます。疾病利得に注意して、患者さんが自分のストレスに向き合えるようにしていくことが大切です。