自律神経失調症の方の仕事・上司への向き合い方と診断書

アイコン 2016.10.6 身体表現性障害・自律神経失調症
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自律神経失調症とは、自律神経のバランスが崩れてしまったことによって身体症状が認められている状態をさします。

自律神経は全身の臓器や血管、筋肉に分布しているため、非常に多彩な症状が認められます。ですから自律神経失調症といっても、人によって大きく症状は異なります。

仕事がストレスになって、自律神経失調症を発症された方も少なくありません。平日に仕事に行こうとすると体調が悪くなり、休日になると身体が楽になるという方も多いです。

このような症状なので、「未熟なのではないか」と自分を責めたり、「甘えじゃないか」と周囲から誤解されてしまうことも少なくありません。

自律神経失調症の患者さんの中には、思うようにいかないストレスが蓄積してうつ状態になってしまうこともあります。医師に診断書を書いてもらって休職したほうがよいケースもあります。

ここでは、自律神経失調症の患者さんはどのようにして仕事に取り組めばよいのか、また周囲はどのような配慮ができるかについて詳しくお伝えしていきます。

 

1.自律神経失調症のことを正しく理解することが大切

自律神経失調症は非常に広い概念で、様々な疾患が含まれています。ですから自律神経失調症の患者さんの仕事への向き合い方は、人それぞれ異なります。

冒頭でもお話しした通り、自律神経失調症は正式な病名ではありません。自律神経のバランスが崩れた(失調した)状態であれば、すべてが自律神経失調症となります。

ですから、同じ自律神経失調症と診断された患者さんがいたとしても、その状態は非常に幅があるのです。まずはそのことを理解していただく必要があります。

自律神経症状が認められれば自律神経失調症と診断されるため、うつ病や不安障害などの精神疾患がある患者さんが含まれていることもあります。

ですから、自律神経失調症の患者さんの仕事に対する向き合い方は人それぞれ異なります。それではどのように考えていけばよいのか、続けてお伝えしていきます。

 

2.自律神経失調症の原因ごとの仕事への向き合い方

自律神経失調症では、本人の要素が大きいか、ストレスそのものの要素が大きいかで、仕事での向き合い方が変わります。

自律神経失調症の仕事への向き合い方を考えていくためには、その原因から理解しておく必要があります。自律神経失調症には、大きく3つの原因があります。

このうちでもっとも多いのが、ストレスによるものです。会社にいるときだけ症状が出てくるといった明確なきっかけがある場合は、ストレスだとわかりやすいかと思います。

とはいえ、同じストレスがかかったとしても、その受け止め方は人それぞれです。ストレスには、

この2つが考えられます。少し乱暴かもしれませんが、「本人の要因=バケツ」「ストレスそのものの要因=水」と考えてみてください。

バケツが小さいとすぐに水があふれてしまいますね。一方でバケツが大きくても、大量の水が入るとすぐにあふれてしまうかと思います。

前者であればバケツを少しずつ大きくしなければ、すぐに再発してしまいますね。後者であれば、水の量をうまく調節してあげれば再発はしにくいです。

このように考えると、自律神経失調症の患者さんでは水(=仕事)を減らせばよいというものではないということが分かります。

本人の要素が強いときは、できるだけ仕事を続けながら少しずつ成長していくことが大切です。ストレスそのものの要素が強いときは、しっかりと環境を整えて負荷を軽減することが大切になります。

 

3.自律神経失調症の職場への相談の方法

①直接上司②人事・総務③産業医などの方法で相談できますが、それでも職場理解が得られなければ、主治医に診断書で就労上の意見を書いてもらうのも方法です。

「自律神経失調症を会社にいうべきですか?」という質問を患者さんからよくうけます。

自律神経失調症に限らず、精神疾患に対する会社の理解はまだまだ十分とは言えません。しかしながら相談することで、自律神経失調症を治していくために現実的な対処ができます。

相談することで自分のことを理解してくれる人ができるだけで、ストレスは緩和されます。現実的に仕事の調整をしてくれるかもしれません。

ここでは、職場でどのようにして相談していくのか、その方法について具体的にお伝えしていきたいと思います。

職場にはどのようにして自律神経失調症のことを伝えればよいでしょうか?そのルートとしては4つあります。

  1. 直接上司に自分から相談する
  2. 人事・総務の担当者に相談する
  3. 産業医に相談する
  4. 主治医から診断書で意見を書いてもらう

直接的に仕事のマネージメントをしているのは上司になります。相談にのってもらえそうな上司ならば、自分から直接相談する方がよいでしょう。上司に相談しにくい場合は、人事・総務部の担当者に相談してみるのも方法です。上司にアプローチしてくれたり、これからの仕事のやり方について相談にのってくれるでしょう。

また、50人以上の従業員がいる事業所では、産業医が月1回以上必ず訪問しています。産業医に情報コントトロールを上手くしてもらいながら、会社にどのように伝えるのかを相談するのも方法です。

これらによっても職場の理解が得られない場合は、主治医から就労に関する意見を書いてもらうしか方法がありません。具体的に書かれすぎてしまうとマネージメントができなくなってしまうので、「適切な業務上の配慮が望ましい」といった具合に診断書をお願いしてみましょう。

 

4.自律神経失調症が悪化してしまった場合は休職も必要

うつ状態になってしまったり、自律神経症状のせいで仕事に来れなくなってしまう場合は、仕事を休職することも必要です。無理して仕事を続けると、精神症状が悪化してしまうこともあります。

自律神経失調症の状態によっては、一度しっかりと休んで治療に専念した方がよい時もあります。

私が自律神経失調症の患者さんに休職をすすめるのは、以下の3つのケースです。

自律神経失調症の症状のせいで、仕事に通えなくなってしまうこともあります。最も典型的なのが、電車に乗ると吐き気や下痢が認められるケースです。途中下車を余儀なくされてしまうほどになると、遅刻や欠勤が続いてしまいます。

勤怠が悪化してくると、仕事に迷惑をかけているという気持ちからますますストレスを感じてしまい、症状がますます悪化してしまいます。このように勤怠が悪化するほどの自律神経症状が認められている場合、休職をして治療に専念したほうが良いです。

また、自律神経失調症の治療をはじめても徐々に悪化していく場合も、休職を考えた方がよいです。悪循環になってしまって、自律神経失調症が徐々に悪化してしまいます。

日々の仕事でのストレスから、気分が落ちこんだり気力が出なくなってしまって、うつ状態になってしまう患者さんもいらっしゃいます。そのような時は無理してはいけません。しっかりと休んで治療をすることが大切です。

 

医師から休職をすすめられたときは、その指示にしっかりと従って休職をしてください。「休んでしまったら二度と戻れなくなるんじゃないか」「職場復帰した時に居場所がないのではないか」と不安になるのももっともです。

ですが無理して仕事を続けると失敗体験も続き、自律神経失調症も悪化してしまいます。会社からもミスが目につき、むしろ自己管理ができていないと評価を落としてしまうこともあります。仕事をしっかり休んで療養した方がよいです。

しっかりと心身の調子を整えて復職できるようになったら、産業医を交えて相談していきましょう。

 

5.自律神経失調症の診断書について

診断書は3000円くらいが相場です。主治医に頼んで診断書をかいてもらいましょう。会社は「休職を要する」という診断書を受け取った場合、原則として直ちに休職させなければいけません。

自律神経失調症で休職を医師から勧められた場合、診断書を医師に書いてもらいましょう。

診断書は、すべて自費負担になります。自費ですので、その料金は病院ごとの判断に任せられています。一般的な病院では、診療情報提供書の料金を目安にしていて、3000円程度の医療機関が多いと思います。

病院によっては、もっと安価で書いてくれるところもあります。とくに文章だけの診断書はすぐに書けるので、なかには1500~2000円くらいの良心的な病院もあります。

それでは今度は、会社側に視点を移してみたいと思います。会社側は「休職を要する」という診断書を受け取った場合、原則的に直ちに休職させなければ安全配慮義務に違反となってしまいます。

詳しく知りたい方は、「精神科・心療内科での診断書の実情とは?」をお読みください。

 

6.自律神経失調症の方への職場でできる配慮

精神疾患に対して理解をしてあげてください。出来る範囲で仕事の中で治療していける環境を調整してください。

最後に、これらを踏まえて職場ではなにができるかについて考えていきましょう。

もっともお願いしたいことは、自律神経失調症をはじめとした精神疾患に対して理解していただきたいということです。

先ほど自律神経失調症の原因としてバケツと水の話をしましたが、バケツが大きい人でも自律神経失調症にかかってしまうこともあります。そのような人は、水がなくなれば繰り返すことは少ないのです。

それでは会社としては何が出来るでしょうか?自律神経失調症の従業員に対して、会社はどんなことができるのかをお伝えしていきたいと思います。

①自律神経失調症の治療をうけていなければ病院をすすめる

自律神経失調症は、薬物療法で症状をコントロールできることもあります。もしも従業員の方が自律神経失調症の治療をうけていなければ、病院への受診をすすめてください。

なかにはお薬の治療を嫌がって、漢方薬やカウンセリングなどで治療をされたいという方もいるかと思います。薬を使ったほうが効果は期待しやすいですが、会社の外に相談できる場があるというだけでも重要です。

②本人の同意のもとで職場での情報共有をはかる

自律神経失調症で悩んでいることが分かった場合、職場で情報共有ができた方がよいです。ただし繊細な個人情報になりますので、本人としっかりと相談して同意のもとで、必要最小限に情報共有してください。

などの中で、本人のために情報共有した方がよい範囲を相談しましょう。周りが自分の状況を理解してくれている中で仕事ができれば、「何かあっても大丈夫」と安心感を持って仕事ができます。これからお伝えするような仕事での配慮も行いやすくなります。

③相談しやすい環境を整える

自律神経失調症に限ったことではありませんが、何かあった時に相談ができない環境はストレスになります。

相談しやすい環境をつくっていくのは従業員側でも大切なことなのですが、自律神経失調症の患者さんに対しては会社から体制を整えていただけると助かります。

どのように相談したらよいのか、具体的に決めておいてください。「困ったら同じ部署の人に相談して」といった形で漠然としてしまうと、本人も相談ができません。

「自律神経失調症の病気のことで困ったら〇〇に連絡して。必要に応じて産業医とも相談するよ」とか、「仕事のことで困ったら△△さんに相談して」といったように具体的に決めると相談しやすいです。

さらには、「会社で伝えてほしくないことは産業医の先生に相談して」と伝えていただけると理想です。情報コントロールをしっかりすることで、相談しやすくなります。

④業務内容を調整する

自律神経失調症の患者さんでは、その症状によって業務内容の調整が望ましいこともあります。ストレスの対象が業務環境や内容にある場合は、それを調整することで症状が良くなることがあります。

会社として気を付けた方がよい点は、運転業務や危険業務です。自律神経失調症の治療を始めていくと、ほとんどの場合で精神科のお薬を服用します。精神科のお薬は運転がダメと書いてあるものがほとんどなので、何か事故があった場合は会社の責任も問われてしまいます。

運転や危険作業をしない業務に変更するようにしましょう。ときに主治医に意見を求める会社もありますが、主治医からは添付文章に運転禁止と書かれているものに対して「運転可」とは書けません。

どこまで調整が可能かは、現実的には実際のマネージメントとのバランスかと思います。出来る範囲で業務調整をしてください。

 

まとめ

自律神経失調症は非常に広い概念で、様々な疾患が含まれています。ですから自律神経失調症の患者さんの仕事への向き合い方は、人それぞれ異なります。

自律神経失調症では、本人の要素が大きいか、ストレスそのものの要素が大きいかで異なります。前者では仕事を続けながら少しずつ本人が成長していくことが大切ですし、後者では環境を調整して負荷を軽減することが大切です。

うつ状態になってしまったり、自律神経症状のせいで仕事に来れなくなってしまう場合は、仕事を休職することも必要です。無理して仕事を続けると、精神症状が悪化してしまうこともあります。