自律神経失調症を改善させるお薬とは?自律神経失調症の薬物療法

アイコン 2016.9.20 身体表現性障害・自律神経失調症
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自律神経失調症は、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまったことで、身体の症状が認められる状態です。その原因としては、ストレスや生活習慣の乱れなどがあげられます。

そんな自律神経失調症の治療では、お薬もひとつの有効は手段となります。お薬で症状を和らげることで、自律神経失調症を早く治していくことができます。

しかしながら自律神経に対して、直接改善するような特効薬はありません。自律神経失調症のお薬はあくまで補助的なもので、薬で症状を軽減することはできても、お薬だけで完治することはできません。

自律神経失調症でお薬を使っていくときは、お薬はどのような役割があるのかを正しく理解する必要があります。

それではどのようなお薬が自律神経失調症に効果が期待できるのでしょうか。ここでは、自律神経失調症での薬物療法の考え方についてお伝えしていきたいと思います。

 

1.自律神経失調症で使われるお薬とは?

自律神経失調を直接改善するお薬はなく、自律神経失調症ではお薬は補助的なものになります。身体の薬と心の薬を組み合わせて、適宜治療していきます。

まずは、自律神経失調症での薬の役割について考えていきましょう。

自律神経失調症は、自律神経のバランスが崩れてしまっています。それでは自律神経のバランスを適正にしたり、自律神経を直接治療できるお薬があれば、根本的に自律神経失調症を治すことができますね。

ですが残念ながら、そのようなお薬は現在のところ発売されていません。自律神経失調症に効果のあるお薬としては、以下の2つに分けられます。

ストレスは、自律神経失調症の原因として最も多いです。精神科のお薬は、脳の中枢神経に作用します。それによって不安や緊張を和らげ、ストレスを緩和することで間接的に自律神経のバランスを整えてくれます。

自律神経失調症によく使われる精神科のお薬としては、

があげられます。合併している精神疾患があるときは、抗精神病薬や気分安定薬などが使われることもあります。

自律神経失調症は身体にも症状が認められるため、それを治療するお薬も適宜使っていきます。身体症状がストレスになり、そのせいで自律神経失調症が悪化していることもあるためです。例えば、

といったお薬です。これらのお薬はターゲットの臓器や器官に働いて、その働きをピンポイントで整えてくれます。

このように自律神経失調症では、あくまで補助的にお薬を使っていきます。心の薬と身体の薬を組み合わせて治療していくことも多いです。

 

2.自律神経失調症はお薬だけでは治らない

自律神経失調症は、お薬の治療だけではよくなりません。環境調整をしたり、精神療法や生活習慣の是正といった患者さんの努力がひつようになります。

自律神経失調症に使われるお薬は、根本的に自律神経を治すお薬ではないとお伝えしてきました。自律神経失調症のお薬はあくまで補助的なもので、完治させるためにはお薬以外の治療もしていく必要があります。

自律神経失調症を生じる大きな原因は、

になります。ですから自律神経失調症の治療に当たっては、この2つにも目を向けていく必要があります。

ストレスに対しては、ストレス自体の要因が大きければ環境調整を、本人の要因が大きければ精神療法を継続していくことが必要です。生活習慣の乱れに思い当たるところがあれば、できるだけ整えていく必要があります。

自律神経失調症はお薬だけで治ると思い込んでしまうと、治療を続けてもなかなか治らないという結果になってしまいます。精神療法や生活習慣の是正は、患者さんにもエネルギーが必要なことになります。ですがお薬だけでなく、取り組んでいくことが必要になります。

 

3.自律神経失調症でのお薬の効果とは?

自律神経失調症では、①自律神経症状を和らげる②身体症状との悪循環をなくす③二次的なうつ状態や不安障害の治療、といった目的で向精神薬が使われます。

自律神経失調症で使われる向精神薬(精神に作用するお薬)についてみていきましょう。

自律神経失調症では、お薬によって不安や緊張を和らげることで自律神経のバランスを整えていきます。このため自律神経失調症のお薬は、あくまで補助的なものとお伝えしてきました。

しかしながら自律神経失調症では、適切にお薬を使えば早く治っていくことも多いです。自律神経失調症では薬に頼るのではなく、薬の力を借りながらよくしていくことができる病気なのです。

自律神経失調症では、大きく3つの目的で向精神薬が使われます。

自律神経失調症では、自律神経のバランスが崩れているため、ストレスを和らげることで自律神経症状を和らげることができるのは先ほどお伝えしてきました。

自律神経失調症では交感神経が過緊張状態になり、様々な自律神経症状が認められることが多いです。抗不安薬や抗うつ剤によってこれを和らげ、自律神経症状を改善することができます。

それような直接的な作用以上に大切なのが、症状によってストレスがかかり、さらに自律神経症状が悪化していくという悪循環をなくすことです。

自律神経失調症はしばしば、慢性的に続いてしまいます。すると次第に不安や焦りが出てきたり、ネガティブな考えが出てきてしまったりします。そのような精神的ストレスによって、さらに自律神経症状が悪化することが多いです。お薬によってこのような悪循環をなくすことが、治療の大きな転機になることがあります。

また自律神経失調症では、治療が長引く中でうつ状態や不安障害になってしまうことがあります。このように二次的に精神症状が認められた場合は、お薬を使って治療していく必要があります。

 

4.自律神経失調症が治るまでの期間と薬の使い分け

自律神経失調症では、治療期間によって薬を使い分けていきます。短期間での治療が見込めるならば即効性を重視して、長期間に治療がわたるならば依存性と副作用の少なさを重視します。

自律神経失調症はストレスが大きな原因となりますが、ストレスの影響は2つの側面から考えていく必要があります。

ちょっと乱暴な表現になってしまいますが、バケツ(本人の器)と水(ストレス)を考えるとシンプルです。

バケツがいくら大きくても、とんでもない水の量が注がれれば溢れてしまいます。あふれた水が自律神経失調症となります。それに対して、バケツが小さければ、ちょっとした水の量でも溢れてしまいます。

現実的なストレスの要素が強い場合は、ストレスを改善していけば自律神経失調症もおさまっていきます。この場合は、そこまで治療期間が長引かないことも多いです。ですが、どうにも解消できないストレスの場合は、治療期間が長引いてしまうことが多いです。

それに対して本人の要素が強い場合、思考パターンや行動パターンを少しずつ変えていく必要があります。このため、じっくりとした治療が必要となることが多いです。

このような治療期間の違いで、精神科のお薬の使い方は変わってきます。

即効性もあって依存性や副作用もないようなお薬があれば理想的ですが、残念ながら精神科のお薬は一長一短です。

ストレス自体の要因が強く、ある程度ストレスの解消の道筋が見えている場合は、即効性のあるお薬を中心に治療していきます。それに対して、ストレスを解消する道筋が見えなかったり、本人の要因が強い場合は、依存性や副作用の少ないお薬を中心にしていきます。

心身症のお薬の特徴として、即効性・依存性・副作用を比較しました。

それでは、自律神経失調症で使われる向精神薬について、ひとつずつみていきましょう。

 

5.自律神経失調症の向精神薬―抗不安薬

ベンゾジアゼピン系抗不安薬では、即効性が期待できますが依存性に注意が必要です。アザピロン系抗不安薬では穏やかに作用しますが、依存性や副作用は少ないです。

自律神経失調症では、「抗不安薬」は即効性のあるお薬として使われることが多いです。ここでは、自律神経失調症で使われる抗不安薬にはどのようなものがあるのか、詳しくみていきたいと思います。

 

①自律神経失調症で使われる抗不安薬とは?

抗不安薬は、不安や緊張を和らげるために使われるお薬です。主に使われるのは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬です。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、GABAの働きを強めることで脳の活動を抑制します。こうして不安や緊張を和らげる作用があります。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は即効性があるのですが、依存性に注意しなくてはいけません。ベンゾジアゼピン系抗不安薬には様々な種類が発売されていて、患者さんにあったお薬を選んでいきます。具体的にみてみましょう。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、それぞれ作用時間や効果の強さが異なります。自律神経失調症の症状の出方によっても使い分けていきます。

例えば、仕事の当日の朝だけ症状が悪化する方は、作用時間が比較的短い抗不安薬を使っていきます。それに対して、自律神経失調症の症状が一日中絶えずに続いている場合は、作用時間が長い抗不安薬を使っていきます。抗不安薬の比較について詳しく知りたい方は、「精神安定剤・抗不安薬の選び方(効果と強さの比較)」をお読みください。

それ以外の抗不安薬として、セロトニンを刺激するアザピロン系抗不安薬(セディール)があります。

セディールは穏やかに作用しますが、副作用や依存性は少ないお薬です。セディールは、同じくセロトニンを増加させる抗うつ剤よりも効果は穏やかです。このためじっくりと治療ができる時で、そこまで症状が重たくない患者さんに使われることが多いでしょうか。

 

②自律神経失調症での抗不安薬の副作用と注意点

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の一番の副作用は、眠気になります。脳の活動を抑えるお薬ですので、眠気は避けられません。抗不安薬をはじめたり増量するときには、眠気に関しては十分に注意してください。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬には薬の特性として、注意しなければいけない2つの点があります。

耐性とは、お薬を使い続けていくうちに身体が慣れてしまって、次第に薬が効かなくなってしまうことです。依存性とは、薬がなくなってしまうことで身体に不調がみられたり、精神的に落ち着かなくなってしまうことです。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は即効性があり効果の実感もあるのですが、そのかわりに耐性も依存性もつきやすいお薬になります。このため抗不安薬は、注意して使っていかないと依存して止められなくなってしまいます。

この3点を意識して使っていく必要があります。

それに対してアザピロン系抗不安薬は、耐性や依存性はとても少ないです。アザピロン系抗不安薬で気をつけることは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬から切り替える時です。一気に切り替えてしまうと、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の離脱症状がでてきてしまいます。

 

6.自律神経失調症の向精神薬-抗うつ剤

治療が長引くときは、抗うつ剤を使っていくことが多いです。

「抗うつ剤」です。抗うつ剤ときくと、「うつの薬じゃないの?」と思われるかもしれませんが、不安の病気にもよく使われています。自律神経失調症で使われる抗うつ剤についてご説明していきます。

 

①自律神経失調症で使われる抗うつ剤とは?

自律神経失調症では、治療が長期にわたってしまうことが多いです。そのような時は、お薬の依存性に注意しなくてはいけません。

抗不安薬は即効性があるのですが、使い続けていくと依存してしまいます。治療が長期にわたると想定される場合は、抗うつ剤を併用していくことが多いです。

抗うつ剤の中でも、セロトニンを増加させる効果が強いものが自律神経失調症に使われることが多いです。第一選択として使われる抗うつ剤は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)になります。

現在日本で発売されているSSRIとしては、以下の4種類があります。

患者さんの状態によって使い分けていきます。例えば過敏性腸症候群などでは、ガイドラインでもSSRIはグレードAとして推奨されています。

SSRIが合わない場合は、その他の抗うつ剤を使うこともあります。

 

②自律神経失調症での抗うつ剤の副作用と注意点

自律神経失調症で使われるSSRIは、セロトニンを増やすように作られたお薬です。このため、副作用の中心も「セロトニン」によるものです。

セロトニンによる副作用として最も多いのが、胃腸障害です。とくに吐き気が多いですが、これはお薬の使い初めに多いです。しばらくすると慣れていく患者さんが多いです。

また、セロトニンによって睡眠が浅くなりますので、不眠の副作用がみられることがあります。反対に眠気が強く出る患者さんもいるので注意が必要です。性機能障害がみられる患者さんもとても多いです。

副作用をあげていくと怖い薬に感じてしまうかもしれませんが、SSRIは安全性の高いお薬です。お薬が蓄積して脳にダメージをもたらしたりはしないので、過剰に心配しないでください。

はじめは副作用を軽減するために少量からはじめ、問題がなければ少しずつ増量していきます。抗うつ剤の効果は時間がかかることが多く、2~4週間かけて効果をみていきます。

SSRIは不安になりやすい体質に対して効果があるお薬で、時間をかけて少しずつ不安になりにくくしていくお薬です。ですから、症状がなくなってもしばらく服用し続けることが大切です。

 

7.自律神経失調症の向精神薬-睡眠薬

睡眠が乱れている場合は、睡眠薬を使っていくこともあります。

睡眠と自律神経に大きな影響を与えます。

基本的には日中には交感神経が優位になり、活動的になります。それに対して夜間には副交感神経が優位になり、リラックスさせて心身を休めます。このように一日の時間帯によって自律神経のバランスが変わり、それぞれの役割を果たしています。

自律神経失調症では、夜間でも交感神経が活性化してしまっていて、不眠になってしまうことが多いのです。その反対に、不眠が続けば自律神経のバランスが乱れてしまいます。

そのような時には、睡眠薬を使って睡眠を整えることで、自律神経のバランスを整えられることもあります。

睡眠薬としては様々なタイプが発売されていて、

睡眠薬としてもっともよくつかわれているのは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。抗不安薬と同じように、GABAの働きを強めることで催眠効果がみとめられます。副作用も同様に、眠気・耐性・依存性が認められます。

それに対してロゼレムとベルソムラは、副作用が少ない新しい作用機序の睡眠薬として近年発売されました。

睡眠薬について詳しく知りたい方は、「睡眠薬(眠剤)の効果と強さの比較」をお読みください。

 

8.自律神経失調症で漢方薬は有効か?

漢方薬は、不定愁訴や副作用の軽減に有効です。自律神経失調症では、漢方薬が効果が期待できることもあります。

自律神経失調症では、様々な症状が認められます。このような症状のことを、一般的に不定愁訴といったりします。漢方薬は体質を整えていくような治療なので、不定愁訴には効果が期待できます。

これまでみてきたような抗不安薬や抗うつ剤は、作用メカニズムもはっきりしていて効果も科学的に実証されています。それに対して漢方薬は経験則に基づいて発展してきた医学なので、効果にも個人差があります。そしてその効果がみられるまでにも、2週間~1か月ほど時間がかかることが多いです。

漢方薬は、そもそも病気や症状に対してこれといったような使い方はしません。患者さんごとの身体のバランスの崩れ方をみて、それを整えていきます。ですから、例えば頭痛でもむくみであっても、同じ漢方が処方されることがあります。

自律神経失調症では、様々な自律神経症状が認められます。病院での漢方は、おおよそ症状ごとに向いている漢方薬があって、患者さんの体質を合わせて使うという方法をとることが多いです。

自律神経失調症によく使われる漢方薬としては、以下のようなものがあげられます。

これらに加え、自律神経症状に応じた漢方薬が使われます。自律神経失調症の漢方治療について詳しく知りたい方は、「自律神経失調症に効果的な漢方薬とは?病院での自律神経失調症の漢方治療」をお読みください。

 

まとめ

自律神経失調症の薬物療法についてみてきました。

自律神経失調を直接改善するお薬はなく、自律神経失調症ではお薬は補助的なものになります。身体の薬と心の薬を組み合わせて、適宜治療していきます。

自律神経失調症の治療は薬物療法だけではありません。自律神経失調症の治療について詳しく知りたい方は、「自律神経失調症を改善させる治し方とは?自律神経失調症を完治させる治療法」をお読みください。