あがり症かどうかチェックする4つのステップ

アイコン 2016.4.3 社会不安障害/社交不安障害

あがり症とは、人前で過度に「あがって」しまって、自分の本来の力をはっきできないことをいいます。正式な病名というわけではなく、世間で言われている病名です。診断基準でみてみると、社交不安障害パフォーマンス限局型に該当する方が多いでしょう。

あがり症といっても、その症状の程度は様々です。大勢の前での発表の時だけ思い通りにできない方から、授業中に当てられるだけで緊張してしまう方まで様々です。あがり症を性格と考えてしまっている方も多いです。

あがり症の中には、病気として治療した方がよい方もいらっしゃいます。あがり症を克服することで、その人の生き方も変わるのです。

ここでは、社交不安障害のアメリカでの診断基準(DSM‐Ⅴ)をもとに、あがり症を順序立ててチェックできるようにしたいと思います。ひとりでも多くの方の気づきになれば幸いです。

 

1.あがり症は「性格」ではなく「病気」かもしれない

あがり症は、性格と思い込んでしまっている方が多いです。あがり症の中には、治療をしていくことで生き方が変わる方もいらっしゃいます。

まずはじめにお伝えしたいこととしては、あがり症を「性格」と思い込んでしまって居る方が多いことです。性格だから変えることができないものと、苦しみながら生きている方が多いのです。

「緊張しい」だとか「ビビり」といった性格と思い込み、恥かしいものと考えて胸に秘めながら割り切って生活してしまいます。できるだけ苦手なことを避けるようにして生きていくことで、本当はやりたいことができなくなってしまいます。

あがり症の中には、社交不安障害という病気である方もいらっしゃいます。社交不安障害の中でも、他人から明らかに注目される時だけを苦手とするパフォーマンス限局型の方が多いです。

あがり症を性格と考えず社交不安障害という病気と考えられれば、治療しようと思えるようになります。

仕事で前に出れるようになったり、社交的になって人間関係が広がっていく方もいらっしゃいます。その人の生き方が変わっていくことがあるのです。あがり症の患者さんは、不安感さえ軽減したら人と関わりたいと思っている方が多いのです。

といったことに心当たりがある方は、あがり症をセルフチェックしてみましょう。

 

2.あがり症のチェック①-病気かどうかチェック

6か月以上にわたって、人から注目されると本来の自分が発揮できていませんか?

まずはじめに、根本的なことから考えていく必要があります。はたして心の病気なのかどうかということです。

あがり症は病気のレベルで考えていかなくても、内気な性格という範囲であることもあります。それを無理にあがり症として治療する必要はありません。

控えめな内気な性格というのは、決して病的ではありません。むしろ状況によっては、「協調性がある」「期待通りにこなしてくれる」として評価されることもあります。あがり症なのか内気な性格なのかの違いは、社会生活への影響の大きさによって決まります。

心の病気かどうかの線引きは、検査して数字でみえるものでもありません。何が正常で何が異常なのか、非常に線引きがあいまいです。少しでもはっきりとさせようと様々な心理検査も作られていますが、あくまで補助的なものになります。

それではどうやってあがり症かどうかを判断するかというと、以下の2つになります。

このことは診断基準にも明記されていて、

の2点が記載されています。

あがり症の方は、本人の苦痛が大きいことが多いです。ですから、人から注目されることに不安を感じてしまって本来あるべきことができていない時は、あがり症として考えていく必要があります。一方で、緊張することはあるけれども自分なりに場合は、心の病気として治療しなくても大丈夫です。

さらにはある程度の期間持続していることが必要で、診断基準では6か月以上続いている必要があります。

 

3.あがり症のチェック②-本質的な症状があるか

他人から否定的に見られるのではという恐怖が認められます。

あがり症の本質的な特徴があるかをみていきましょう。あがり症では、他人に注目されるような社会的状況に対しての過度な恐怖や不安にあります。

その根底には、「他人から否定的な評価をされるかもしれない恐怖」があります。「他人からバカにされてしまうのではないか」「恥をかいてしまったらどうしよう」と考えてしまって、自分がネガティブにみられて拒絶されてしまうのを恐れてしまうのです。

これらの恐怖が本質にあり、さまざまな精神症状や身体症状が生じます。あがり症では、「他の人にみられているのでは?」「変に思われていないかな?」などの考えがはじまり、そこから不安がどんどん発展していくことが多いです。

 

4.あがり症のチェック③-回避行動をしているか

不安な社会的状況を何とか耐え忍んでいる方もいますが、回避する行動パターンをとることが多いです。

あがり症の方は、自分がネガティブにみられることを恐れています。物事を考える時に否定的な側面を過剰に考えてしまうのです。このため現実的にはそこまで不安や緊張をする場面でなくても、過剰に感じてしまうのです。

苦手な状況に直面した時に、そのような状況を何とか耐え忍んで社会生活を送っています。できれば苦手な状況を避けたいので、多くの方が避けようとします。このような回避行動のパターンが強くなると、成功体験を積めないことで苦手意識がますます強くなってしまいます。それが予期不安(これから起こるかもしれないことへの不安)を強めてしまうのです。

このようにして不安の悪循環が強まっていきます。このため、回避行動があるかどうかは重要なチェック項目です。

このようなことがある場合は、あがり症が生活に影響しているといえます。

 

5.あがり症のチェック④-他の病気でないこと

うつ病でないことを確認していく必要があります。また、統合失調症や発達障害でないことを確認していく必要があります。

他の病気のせいで物事のとらえ方が変わってしまい、あがり症になってしまうこともあります。ですから、他の病気をしっかりと除外しなければいけません。

まずはじめに、うつ病でないことを確認する必要があります。気持ちが落ちこんで悲観的になっている時に、人目が気になってしまうのは仕方がありません。「自分がマイナスにみられてしまうのではないか」という気持ちは、うつ病から来るものです。まずはしっかりとうつ病の治療をすすめていく必要があります。うつ病の回復とともによくなっていくことが多いです。

あがり症の方で、苦手なことが多い方は統合失調症も念頭に置く必要はあります。統合失調症は幻覚や妄想が認められることが多い病気なので、まったく違う病気に感じるかもしれません。統合失調症の症状として、色々なことに敏感になってしまうことがあります。それが一見するとあがり症に見えることもあります。

また、発達障害が背景に隠れていることもあります。発達障害の患者さんは、コミュニケーションが周りとずれてしまうことが重なって対人関係でうまくいかないことが多いです。また、社会の決まりを自然に理解できないこともあります。その結果としてあがり症を合併することもあります。

このように、あがり症の背景を見極めるには専門家でも難渋することがあります。セルフチェックを通して「自分はあがり症では?」と思った方は、精神科や心療内科を受診するようにしましょう。

社交不安障害の診断基準について詳しく知りたい方は、「社会不安障害の診断基準と実際の診断」をお読みください。

 

6.あがり症を心理検査からセルフチェック

あがり症の心理検査としては、様々な種類のものが開発されています。その中でも2つの有名な心理検査と、不安の程度を数値化する検査をご紹介したいと思います。

 

6-1.LSAS(リーボビッツ社交不安尺度)

あがり症の症状の程度を評価する心理検査になります。

LSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale)は、あがり症である社交不安障害の症状の程度を評価する心理検査として広く使われています。

心の病気は、検査などでわかるものではありません。患者さんの言葉から症状を判断していくしかないので、その症状の程度がどれくらいなのかは感覚的なものになりがちです。

きっちりと現在の症状と治療による症状の変化を評価していくには、ある程度網羅的に症状を確認する必要があります。それに役立つのがリーボビッツ社交不安尺度です。リーボビッツ社交不安尺度では、あがり症の方が苦手とする代表的な社会状況をまんべんなく見ていく心理検査です。

リーボビッツ不安尺度は、全部で24項目からなります。そのうち13項目は、何かをする状況によっての不安をみるものです。11項目は、人とあったり社交場面での不安をみるものです。

それぞれの項目に対して、恐怖感と不安感を0~3の4段階、回避の程度を0~3の4段階で評価していきます。ここ1週間の症状をもとに評価していき、最近にない状況については想像して答えていきます。

実際にLSASを行ってみたい方は、「社会不安障害のセルフチェック(リーボヴィッツ)」をご覧ください。

 

6-2.BSPS(簡易社会恐怖尺度)

7つの社会的状況での恐怖と回避を評価して、赤面・動悸・ふるえ・発汗の4つの身体症状も評価します。

BSPS(Brief Social Phobia Scale)は、同じくあがり症の症状の程度をみるためのものです。BSPSは11項目と、LSASに比べると質問項目が少ないです。特徴的なのは、社会的状況だけでなくて身体症状についても評価をする点です。

7項目に関してはLSASと同様にして、社会的状況での恐怖の程度と回避の頻度をみていきます。残りの4項目については、赤面・動悸・ふるえ・発汗の4つの身体症状について5段階で評価していきます。

BSPSの特徴は、LSASよりも簡単にできることと身体症状との関連性がわかることです。あがり症かどうかのセルフチェックでの意味合いでは、LSASの方がわかりやすいでしょう。

 

6-3.STAI(状態-特性不安検査)

不安へのなりやすさと現在の不安を点数化する心理検査です。

STAIはあがり症に限った検査ではありませんが、不安の程度を評価するのによく使われている心理検査です。

不安は、特性不安と状態不安に分けることができます。特性不安とは、もともとの不安へのなりやすさが反映されます。状態不安とは、現在感じている不安の強さが反映されます。

それぞれ20項目の合計40項目に対して、4段階で自分にあてはまる状態を選んでいきます。全部で80点満点で評価し、男性と女性では評価基準が多少異なります。

実際にSTAIを行ってみたい方は、「不安障害や神経症をSTAI(状態-特性不安検査)でチェック」をご覧ください。

 

まとめ

あがり症を病気として治療していけば、学校や仕事、家庭や友人関係などでの不必要な不安や恐怖を感じずに過ごすことができます。これによって生き方が変わっていけるのです。

これは何よりも私自身が経験しているからこそ、心からお伝えできます。私も自分の性格と思い込んで長く苦しんできましたが、病気として向き合うことで生き方が変わりました。

今では人前で話をする機会も仕事柄多いですし、産業医では企業に出向いて仕事もしています。しっかりと向き合うことで、私の生き方は大きく変わったと思います。

ですからあがり症のセルフチェックで疑われた方は、心療内科や精神科をぜひ受診していただきたいと思います。しっかりと専門家に判断してもらい、必要な治療をうけてください。少しでも多くの方があがり症を克服し、生き方を変えるきっかけになれば幸いです。