パニック障害を克服するには?パニック障害の治療法と対処法

アイコン 2016.6.6 パニック障害・広場恐怖

パニック障害とは、突然のパニック発作を繰り返してしまう病気です。急に動悸やめまい、息苦しさなどが生じてしまい、強烈な不安感や恐怖感に襲われます。

このようなことが繰り返されると、いつまたパニック発作に襲われるかわからずに不安がつきまといます。このような不安を「予期不安」といいますが、予期不安によって当たり前だった日常生活に支障が出てききてしまいます。

多くのパニック障害の患者さんでは、「逃げ出せない」「助けが得られない」という状況が怖くなってしまう広場恐怖を合併してしまいます。パニック障害の治療にあたっては、広場恐怖を合併するかどうかで大きく治療がかわります。

ここでは、パニック障害を克服するための治療法についてお伝えしていきます。

 

1.パニック障害を克服するためにはお薬が重要!

パニック障害では、薬物療法が有効です。漢方薬では効果が不十分なことが多いです。精神療法をすすめていくにも、症状がコントロールできている方が効果的です。

まず初めにお伝えしたいこととしては、パニック障害をしっかりと克服するためにはお薬が重要であるということです。

パニック障害では抗うつ剤を中心とした薬物療法を行っていきますが、他の不安障害に比べても抗うつ剤の効果が期待できます。多くの患者さんが、ひとつの抗うつ剤を使うと症状がよくなります。

ですからパニック障害を克服するためには、病院で薬物療法をしっかりと受けていただくことが最も確実です。しかしながら、精神科のお薬に対して不安に思われている患者さんも少なくありません。「お薬を使わずに治療できませんか?」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。

確かに漢方薬などを使って治療をしていくことはあります。しかしながら漢方薬では効果が不十分なことが多いです。パニック発作や予期不安などの症状をコントロールできていない状態では、精神療法もうまくすすめていけないこともあります。

不安が強い時に柔軟な考え方はできませんし、不安に立ち向かっていくエネルギーも作れません。無理をしてしまうと、パニック障害が悪化してしまうこともあります。

ですからパニック障害を克服するために、病院でお薬を使った治療を行っていただきたいのです。ここでは、パニック障害を病院でどのように治療していくのか、詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

2.パニック障害の治療①-パニック障害と向き合う

パニック障害では、お薬で症状を抑えて、認知行動療法を中心とした精神療法を組み合わせることによって治療を進めていきます。

まずはパニック障害とはどのような病気なのかを理解しましょう。

繰り返しになりますが、パニック障害の治療にはお薬はとても大きな役割を果たします。パニック発作や予期不安を落ち着かせることで、症状をコントロールできているという安心感と回復の自信をもてるのです。

とはいっても、お薬を使えばすぐに克服できるものではありません。パニック発作や予期不安が軽減して落ち着いたら、少しずつ精神療法を積み上げていく必要があります。

この時に、広場恐怖を合併しているかどうかで治療アプローチが異なってきます。広場恐怖とは、パニック発作のせいで「逃げ出せない状況」「助けが得られない状況」に対して恐怖心が芽生えてしまった状態です。

広場恐怖が合併していなければ、どちらかというと認知面にアプローチして精神療法を行っていきます。広場恐怖を合併していれば、行動面を重視したアプローチの精神療法を行っていきます。

詳しくは後ほどお伝えしていきますが、このように精神療法の地道な積み重ねが非常に大切です。特に広場恐怖を合併している場合はとても重要ですし、パニック障害の再発予防効果が高まります。本当の意味でパニック障害を克服していくには、精神療法はかかせません。

そして症状がよくなっても、しばらく通院を続けていく必要があります。10年間でみると、パニック障害は半数の患者さんが再発します。特に女性では再発率は高いといわれています。

パニック障害の治療期間は長くなることもありますし、とくに広場恐怖がある方は生活での努力も必要になります。ですが一歩一歩積み重ねていけば、少しずつ克服していける病気でもあります。

パニック障害に関して詳しく知りたい方は、私のサイトでも様々なテーマでまとめています。よろしかったら「パニック障害のカテゴリ」をお読みください。

 

3.パニック障害の治療②-精神科・心療内科に受診

精神科・心療内科は怖いところではありません。受診の一歩を踏み出してください。

パニック障害について理解したら、精神科や心療内科に受診することが治療のスタートです。

パニック障害の患者さんの中には、苦手なことを避ければ何とかなるからと受診を避けてしまう方もいらっしゃいます。放置しておくとパニック障害は悪化していき、受診することすらできなくなってしまうこともあります。

そこまでいかなくても、

「まわりに理解してもらえないから…」
「自分は病気ではない…」
「精神科や心療内科は怖い…」

など様々な理由で病院に行きたくない患者さんもいらっしゃると思います。

パニック障害の患者さんは実に様々な方がいて、周りから信頼されている社会的な地位のある方もいらっしゃいます。ですから、自分自身を病気だと認められない方もいます。心の病だということを認めたくないという気持ちは当然のことです。

精神科や心療内科に対して怖さを感じている方もいらしゃるかもしれません。お薬に対する怖さがある方もいるでしょう。パニック障害で使われるお薬については、詳しくは後ほどお伝えしていきますが、安全性が高い薬が中心なので過度に心配しなくても大丈夫です。

精神科・心療内科の診察について不安をお持ちの方は、「精神科・心療内科の受診のイメージと流れ」をお読みください。

パニック障害をしっかりと克服するために、医師と相談しながら二人三脚で治療をすすめていきましょう。

 

4.パニック障害の治療③-まずは生活習慣を見直す

睡眠・食事・運動・カフェイン・喫煙・アルコールの生活習慣を見直してみましょう。とくに喫煙はパニック障害のリスク要因です。禁煙について検討してみてください。

パニック障害の治療をはじめていくにあたって、生活習慣を見直すことはとても大切です。生活習慣からパニック障害が改善していくこともありますし、薬も不必要に使わなくてすみます。

生活習慣が乱れていると、精神状態が乱れやすくなります。睡眠不足が続けば、ちょっとしたことにイライラしたり、動悸が止まらなかったりといった心身の不調を感じたことはあるでしょう。

パニック障害の治療を始めていくに当たっては、不安や緊張が高まりやすい状態をなくしていく必要があります。生活習慣は「習慣」ですから、身体に染みつけば当たり前になっていきます。長い目で見た再発予防の観点でも、生活習慣を整えることは大切です。以下のような生活習慣を見直してみてください。

この中でも喫煙は、パニック障害のリスク要因として明確にされています。パニック障害への喫煙の影響は、大きく2つあげられます。

ニコチンによる依存が形成されると、ニコチンが切れてしまった時に落ち着かなくなります。また呼吸機能も低下していくので、息苦しさにつながっていきます。

パニック障害の患者さんでは、できれば禁煙を同時に進めた方がよいです。精神的につらい時に禁煙を進めていくことは、気持ちの上でハードルが高いかもしれません。少なくともパニック症状が落ち着いたら、禁煙治療に取り組むことを検討してみてください。

 

5.パニック障害の治療④-薬物療法で症状を抑える

パニック障害では、抗うつ剤を中心とした薬物療法が効果的です。パニック発作や予期不安をお薬でコントロールしていきます。広場恐怖はお薬でサポートしつつ、精神療法を積み重ねていく必要があります。

パニック障害の治療では、薬物療法によって不安症状を抑えるのが一番の克服への近道です。

パニック障害では、セロトニンを増加させるSSRIなどの抗うつ剤の効果が期待できます。抗うつ剤は効果に時間がかかるため、即効性のある抗不安薬を併用することが多いです。

このような薬物療法によって、パニック発作や予期不安は落ち着いてくるようになります。不安がコントロールできるようになると、患者さんも回復の安心感がもてます。心に余裕がでてくれば、柔軟に物事が考えられるようになっていきます。

広場恐怖に関しては、薬物療法だけではなかなか克服できません。「逃げ出せないかもしれない」という苦手な場面での不安や恐怖を軽減することはできますが、完全になくし去るのは難しいです。

このため、お薬でサポートしながら精神療法を積み重ねていく必要があります。広場恐怖を合併している患者さんでは、じっくりと薬物療法と精神療法を行っていく必要があります。

お薬を不安に思われる方も多いかと思いますが、抗うつ剤は用法を守れば安全性の高いお薬です。抗不安薬も耐性(効かなくなること)と依存性(やめられなくなること)に注意して、出口を見据えて使えば問題ありません。

パニック障害の薬物療法について詳しく知りたい方は、「パニック障害に効く薬とは?パニック障害の薬物療法の効果と副作用」をお読みください。

 

6.パニック障害の治療⑤-精神療法を積み重ねる

パニック障害では、広場恐怖がない方は認知面からのアプローチ、広場恐怖がある方は行動面からのアプローチに力を入れた認知行動療法を行っていきます。

お薬によって症状が落ち着いてきたら、精神療法を行っていきます。パニック障害では、広場恐怖があるかどうかで精神療法でのアプローチも変わってきます。

広場恐怖がない患者さんは、お薬で症状がコントロールできれば普通に生活することができるようになります。再発を予防していくために、偏った考え方や不安になりやすさなどの認知面でのアプローチをしていきます。

広場恐怖がある患者さんは、「習うより慣れろ」で行っていくことが多いです。つまり、「習う=認知」よりも「慣れる=行動」を行っていくのです。行動面からのアプローチを中心にしていきます。

 

パニック障害では、少しずつ精神療法を積み重ねていく必要があります。広場恐怖がある場合はその克服には重要ですし、そうでなくても再発予防効果が期待できます。

理想をいえば、カウンセリングでしっかりと時間をとって精神療法を計画的に行っていった方がよいです。しかしながらカウンセリングは、金銭的な敷居が高くなってしまいます。

精神科や心療内科の外来でも、少しずつ精神療法を意識しながら診察を重ねていきます。ですが外来は時間の限界があるので、どうしても5~10分ほどの診察の中でできる範囲になってしまうことが多いです。外来では医師と一緒に計画をたてて、患者さんが自分の力で精神療法を行っていくことも必要です。

ここでは、パニック障害ではどのような精神療法が行われるのか、ご紹介していきます。

 

①認知行動療法(CBT)

認知行動療法とは、極端になったものの考え方や受け止め方を、現実的で柔軟なものに変えていく精神療法です。

日々の生活の中でいろいろな出来事がありますが、私たちはその現実を「そのままの現実」としては受け止めることができません。これまでの自分の経験などによって評価して解釈します。それに従って気分や感情が生まれ、行動につながっていくのです。

認知行動療法では、この物事の評価や解釈の仕方(=認知)に注目する治療法です。その人の認知が生きづらくしている部分を見つけ出し、少しずつ修正していくのです。それによって気分や行動を変化させていくのが認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioural Therapy)です。

パニック障害の患者さんでは、患者さんごとに様々な認知の歪みがあります。マイナス思考であったり、拡大解釈したり過小評価したり、人それぞれにパターンがあります。不安のなりやすさにつながる思考パターンがあれば、それを修正していきます。

日々の出来事の中で、ひとりでに浮かんでくる考え方のクセ(自動思考)をたどっていくと、認知の歪みが少しずつ見えてきます。この認知の歪みを、現実的な認知に修正をしていくのです。

詳しく知りたい方は、「認知行動療法とはどういう治療法なのか」をお読みください。

 

②暴露療法(エクスポージャー)

暴露療法とは、ざっくり言ってしまうと不安に慣らせていく治療法です。この治療法の原理としては、苦手なものに暴露された時に感じる不安の「2つの慣れ」があります。

あえて自分を苦手なものにさらしていき、その不安が時間と共に薄れていくことを身体で理解して学習していきます。そうはいっても、いきなり無理をしてはいけません。不安階層表というものを作り、取りくみやすいものを課題として順番に行っていきます。

パニック障害の不安階層表

このうちの点数が低いものから順番に暴露していきます。

ここで大事なのは、不安や不快感が生じることに慣れることです。自分の内面に出てくる感情を言葉にしながら、それに慣れていくことが大切です。内面の感情を慣らさずに表面的に耐えてしまうと、他のきっかけですぐにパニック症状が出現してしまいます。

いきなり暴露するのが難しい方は、誰かに付き添ってもらったり、イメージから始めてみても大丈夫です。できることから少しずつ始めていきましょう。

治療がある程度進んでくると、不安を下げるだけでなくて不安耐性を高めることを意識しながら暴露療法をすすめていきます。

複数の刺激を同時に与えてみたり、いろいろな課題に暴露してみます。ときには不安階層表の点数の高いものと低いものをおりまぜて「やることリスト」を作り、どのような感情にも慣れていけることを学習していきます。

最終的には暴露間隔を少しずつあけていって、一度忘れてしまったことを再学習するようにしていきます。

詳しく知りたい方は、「暴露療法(エクスポージャー)とはどういう治療法なのか」をお読みください。

 

③不安管理訓練

暴露反応妨害法の中であわせて行っていきますが、不安を管理していく訓練をしていきます。不安をコントールできるということを学習していくのです。

不安管理訓練には様々なものがありますが、代表的なものをご紹介します。

自己強化とは、不安に暴露した成功体験を積んだ時に、自分自身に対してご褒美を与えることです。「よくやった自分!」「やればできるじゃないか!」とほめ、上手く言った時にはハーゲンダッツを食べるといったご褒美を与えます。家族が協力してくれれば一番よいですが、自分でやることも意味があります。

自己教示とは、不安に暴露していく時に恐怖を消す言葉をつぶやいていきます。「できる、できる」「たいしたことない、たいしたことない」といったように、言い聞かせることで恐怖をのりきります。この時に頭で唱えすぎて、恐怖から完全に目を背けないように注意してください。

選択的注意の振り分けとは、注意を身体の中から外に向けていくことです。パニック障害の患者さんでは、呼吸や心臓の動き、汗やめまいといった身体感覚や症状に注意が向きすぎています。注意を柔軟にして、外部に注意を向けられる練習をします。

まずは目を閉じて、身体の中の感覚に注意を集中します。1~2分したら目をあけて、まわりの興味をひくものに注意を集中します。

思考中断とは、恐怖感はなくせるものだということを学んでいくことです。たとえば、恐怖を感じていた時に身体をつねると、痛みで恐怖が吹き飛びます。このように、恐怖は思考の産物で、それがなくなれば薄れていくものだということを学んでいきます。

行動実験とは、思いっきり走って心臓がバクバク言って息が切れる状況においてパニック発作の状況を再現します。それが徐々に落ち着いていくことを確認して、自分の不安な感情や認知がパニック発作を引き起こしていることを学習していきます。

 

7.パニック障害の治療⑥-薬を使わないリラックス法

呼吸法・漸進的筋弛緩法・自律訓練法など、自分自身をリラックスさせる方法も有効です。

自分自身でリラックスする方法もあります。精神療法と上手く組み合わせていけると、自信につながっていきます。

その代表的な方法としては、以下の3つがあります。

リラックスする呼吸法とは、吐く時間を意識した腹式呼吸法です。上手になってくると、呼吸を整えることで不安や緊張を和らげることができます。苦手な社会的状況に直面した時に、呼吸法で乗り切れれば大きな自信になります。

漸進的筋弛緩法とは、リラクゼーションとも呼ばれている方法です。筋肉の緊張状態を知り、それを和らげていく練習をします。慣れてくると、自分自身の緊張状態に気づけるようになってきます。

自律訓練法とは、リラックス状態を自己暗示で作れるようになっていく方法です。リラックス状態をイメージして、それを身体にしみこませていきます。上手になってくると、リラックス状態をすぐに作れるようになっていきます。

いずれの方法も、繰り返し続けていくことで少しずつ上手になっていきます。いわば筋トレのようなもので、すぐには効果が出ないけれども継続していくことで少しずつ効果が出てきます。

詳しく知りたい方は、「薬に頼らずに不安を解消する4つの方法」をお読みください。

 

まとめ

パニック障害では、お薬で症状を抑えて、認知行動療法を中心とした精神療法を組み合わせることによって治療を進めていきます。

まずは睡眠・食事・運動・カフェイン・喫煙・アルコールの生活習慣を見直してみましょう。とくに喫煙はパニック障害のリスク要因です。禁煙について検討してみてください。

パニック障害では、抗うつ剤を中心とした薬物療法が効果的です。パニック発作や予期不安をお薬でコントロールしていきます。広場恐怖はお薬でサポートしつつ、精神療法を積み重ねていく必要があります。

パニック障害では、広場恐怖がない方は認知面からのアプローチ、広場恐怖がある方は行動面からのアプローチに力を入れた認知行動療法を行っていきます。