パニック障害は遺伝?パニック障害の症状の原因とは?

アイコン 2016.5.25 パニック障害・広場恐怖

パニック障害(Panic Disorder)とは、突然に襲われる激しい恐怖感を特徴とする病気です。

「パニック」という言葉は日常的に使われるかもしれませんが、パニック障害でのパニック発作の程度は軽いものではありません。「死んでしまうのではないか」とまでの恐怖感と不安感に襲われて、めまいや動悸、息苦しさがみられます。

ときには過呼吸となって手足のしびれが出現し、あまりの恐怖に救急車を呼んで来院される方も少なくありません。そんなパニック障害ですが、恐怖が過ぎ去ると症状も落ちつくため、周囲からは誤解されることも多い病気です。

パニック障害は脳の機能的異常が認められる病気で、本人の心の弱さが原因などでは決してありません。パニック障害はどのような原因で発症するのでしょうか?ここでは、パニック障害の原因について詳しくお伝えしていきます。

 

1.パニック障害とは?

パニック障害とは、強烈な恐怖と不安に繰り返し襲われる病気です。パニック発作への恐怖から予期不安が生じ、そのせいで生活が回避的になってしまいます。

パニック障害の原因についてみていく前に、パニック障害(Panic Disorder)とはどのような病気かをご説明していきたいと思います。

パニック障害とは、突然に激しい恐怖と不安に繰り返し襲われる病気です。あまりに強烈な恐怖や不安に対して、「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖にまで発展することも少なくありません。

パニック障害はさまざまな病気で合併することのある病気です。その中でも特に、広場恐怖症と合併することが多いです。広場恐怖症(agoraphobia)とは、「逃げ場がない」と感じるような状況に対して恐怖してしまう病気です。このような状況になると、不安が急激に高まってパニック障害を合併することが多いです。

パニック発作を一度経験してしまうと、また同じようなことが起こってしまうのではないかという予期不安につきまとわれるようになってしまいます。不安を感じながら生活をしているとパニック発作が生じやすくなり、悪循環が進んでいってしまいます。

すると当たり前だった社会生活・日常生活を過ごすことが怖くなってしまいます。苦手な状況は避けてしまうようになります。広場恐怖がある方では、電車やバス、歯医者さんや美容院、飛行機などが苦手になってしまいます。旅行もいけなくなりますし、ひどくなると仕事や学校もいけなくなります。

こうしてパニック障害の患者さんは、本来の生活ができなくなってしまいます。

 

2.パニック障害の原因とは?

パニック障害は様々な原因が積み重なって結果として、脳の機能的な異常が起きていると考えられています。遺伝よりも環境の影響が大きく、パニック障害は誰にでも起こりうる病気です。

それでは、パニック障害の原因について考えていきましょう。パニック障害はもともと心因性の病気と考えられていました。脳の機能的な異常というよりは、心の反応としての産物と考えられていたのです。

しかしながら、2つの大きなことが判明しました。抗うつ剤が効果を示すことと、乳酸ナトリウムを注射することで人工的にパニック発作を誘発できることです。このことは、何らかの脳の機能的な異常があることを意味しています。

現在でもパニック障害の原因は分かっていないことも多いですが、様々な原因が積み重なった結果として、脳の神経や神経の機能異常が発生していると考えられています。

ですから、「心が弱いからパニック障害」になるというわけではありません。そのように見える方の多くは、苦しみの結果としてストレスに対する対処する力が弱くなってしまっているのです。

 

これらの脳機能異常が生じる原因には、大きく分けて遺伝要因と環境要因の2つがあります。パニック障害ではどちらかのせいで発症するというものではなく、遺伝要因と環境要因が重なって発症すると考えられています。

そしてパニック障害では、遺伝要因よりも環境要因が大きいと考えられています。7割以上が環境要因と考えられているため、「パニック障害は誰でもなる可能性がある病気」といえるのです。

そしてパニック障害は脳の機能的異常が原因ですから、治療によって改善していくことができる病気なのです。

 

3.パニック障害の原因―遺伝

パニック障害では、人種や性別によっても発症のしやすさが異なることから、遺伝要因は間違いなくあります。しかしながら詳しいことは分かっておらず、複数の遺伝子が関与していることがわかっています。

パニック障害では、遺伝的な要因があるのは間違いありません。パニック障害の患者さんの家族歴をうかがうと、親族にパニック障害の患者さんがいることが時々あります。このため、遺伝の影響は診察をしていて感じるところではあります。

これを裏付けることとして、パニック障害の有病率は人種や性によって異なっていることがあげられます。

女性は男性の2倍発症しやすく、これにはCOMTという酵素遺伝子が関係しているといわれています。COMTはドパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を分解する酵素なので、遺伝子異常によってこれらの物質が機能異常を起こしやすくなると考えられています。

人種のるつぼと言われているアメリカで人種ごとに比較すると、非ラテン系白人やアメリカ先住民でパニック障害になりやすいと報告されています。

それではパニック障害ではどのように遺伝が関係しているのでしょうか?パニック障害の遺伝に関しては様々な角度から研究はされていますが、依然はっきりと分かっていない部分が多いです。原因遺伝子や遺伝子領域もわかっていません。

パニック障害の遺伝で分かっていることは、ひとつの遺伝子が原因ではないということです。複数の遺伝子が原因となる多因子遺伝の病気であると考えられています。

 

3.パニック障害の原因―環境

パニック障害では環境要因が大きいと考えられています。性格傾向やストレスはもちろんのこと、喫煙やカフェイン、年齢や性別といったことも要因のひとつです。

パニック障害は、遺伝よりも環境の影響の方が大きいと考えられています。遺伝によるパニック障害のなりやすさがあり、そこに環境要因が加わって発症すると考えられています。

パニック障害の環境要因としてはどのようなことが考えられるのでしょうか?順番に見ていきたいと思います。

①性格・考え方

性格や物事の考え方は遺伝的な気質に加えて、さまざまな経験の中で少しずつ形成されていきます。同じことでも性格や考え方が異なれば、ストレスの受け方も変わってきます。ですから、性格や考え方もパニック障害の原因となります。

パニック障害の病前性格(病気の前の性格)として多いのは、以下の2つといわれています。

このように言われるとマイナスな性格にみえますが、そんなことはありません。不安が強いということはきっちりと準備をするということでもあります。

几帳面で真面目、何事にも責任感をもっている人も多いです。むしろ周りからはストレスに強そうに見えて信頼され、社会的に成功されている人も多いのです。その裏で否定的な評価をされることを恐れていて、あまり自己主張もせずに溜め込んでいます。

一方、この性格傾向なマイナスな面だけが目立ってしまう方もいます。自分に自信がなくて人からの評価を気にし、他人に対して依存的な人もいます。パニック障害での苦しみの中で、プラスの部分が少しずつ影を潜めてしまう人もいます。

②幼少期の虐待などのトラウマ

幼少期につらい過去をかかえている患者さんでは、多くの方がパニック発作を経験しています。私も診察していて感じていることではありますが、明確なストレス因は調査もしやすいために研究されています。

幼少期に激しいトラウマ(心的外傷)をうけていると、パニック障害になりやすいことが分かっています。虐待はもちろんのこと、両親の離婚、母親からの愛情などの欠如なども関係していると報告されています。

戦争や強姦、犯罪被害といった凄惨な経験をされた人でも、パニック障害の発症率は高まります。このような誰がみても明らかなストレスは、パニック障害の原因となります。

③ストレス

パニック障害の患者さんでは、様々なストレスが積み重なっていくことが発症の原因となります。ストレスを持続的に受けていると、不安や緊張が高まりやすくなります。その中でパニック発作が起こりやすなります。

パニック障害を発症する患者さんは、何らかのストレスを抱えている方が多いです。近しい人の死や離婚などの大きなライフイベントはもちろん、仕事や家庭での人間関係でのストレス、健康への不安などの様々なストレスが原因となります。

④喫煙

喫煙は、パニック障害の発症リスクを高めることが分かっています。

タバコは様々な物質が合わさって作用するので、複雑でわからないことが多いです。ですがパニック発作を悪化させることは、多くの研究によって結論付けられています。

パニック障害への喫煙の影響は、大きく2つあげられます。

「タバコを一服するとリラックスする」と感じる方も多いでしょう。タバコの成分で有名なニコチンは、一時的に気持ちを落ち着けることがあります。しかしながらタバコを続けていくと依存が形成されていき、タバコを吸わないと不安やイライラが強くなってしまいます。

また、喫煙を続けていくことで呼吸機能は低下していきます。一酸化炭素の血中濃度もあがっていくので、脳内でも酸素が足りないと感じやすくなります。パニック障害の患者さんでは、呼吸困難感がある患者さんが多いです。なかには過呼吸に発展してしまう方もいます。

私の患者さんでも、禁煙してパニック発作が軽減した方もいらっしゃいます。

⑤カフェイン(コーヒー)

コーヒーなどに含まれるカフェインは興奮物質になります。交感神経が刺激され、緊張状態となります。このような状態では不安が高まりやすくなり、パニック障害の原因となります。

カフェインは摂取してから30分程度で効果が始まり、2~4時間後に効果はピークを迎え、個人差は大きいですがおよそ7時間後まで効果が持続します。

カフェインはおよそコーヒー1杯で100mgほど含まれています。一日に250mg以上摂取していると慢性中毒になるといわれています。カフェインをやめた時に、不安やイライラしやすい状態となることもパニック障害につながります。

⑥性別・年齢

パニック障害では、男女に発症の差があります。女性の方が男性よりも、2倍発症しやすいといわれています。これは遺伝のところでおつたえしたように、COMT遺伝子の関係もあるでしょう。

それだけでなく女性と男性の性格傾向の違い、心的外傷の受けやすさの違いなどがあげられるかと思います。一般的に女性の方が社交的ですが、その分まわりのことに敏感になりやすいです。そして男性よりも女性の方が、トラウマを受けやすいということがあります。男性はお酒など「物質」に頼りやすく、パニック障害と診断されずに紛らわしている可能性もあります。

パニック障害の発症年齢としては、20~24歳が平均になります。しっかりと診断しきれていない部分もあるとおもいますが、子供ではパニック障害は少なく、思春期から成年期にかけて増加していきます。年をとるにつれて自律神経反応の衰えもあって、高齢者ではパニック障害の発症は少なくなっていきます。

 

4.パニック障害の生物学的な原因

パニック障害では、偏桃体の過活動によって、恐怖回路全体が活動亢進していると考えられています。青斑核から分泌されるノルアドレナリンが、パニック発作と大きく関係していると考えられています。

パニック障害の患者さんの脳ではどのような異常が認められるでしょうか?最近の研究の進歩によって、パニック障害の生物学的な原因についても少しずつ分かってきています。

パニック障害の患者さんでは、恐怖の回路の活動が全体的に亢進していることが分かってきています。恐怖は決して不必要なものではなく、ちゃんと生きていく上での役割があります。恐怖がなければ危険なものを避けることができません。恐怖がなければそれに備えて準備をしません。

人は恐怖記憶を学習していくことで、適切な回避行動や準備行動をとれるようにしています。この恐怖の回路が過敏になってしまうことが、パニック障害の原因と考えられています。

恐怖には脳の偏桃体という部分が重要な役割を果たしていて、パニック障害の患者さんでも偏桃体の過活動が確認されています。それ以外にも、海馬や視床下部、青斑核などの活動が活発になり、パニック障害の症状が生じます。

 

このように、恐怖の神経回路の異常が考えられていますが、神経と神経の情報の橋渡しする神経伝達物質にも変化が生じます。神経伝達物質の異常としては、以下の3つの異常が考えられています。

この中でも特に、ノルアドレナリンの過剰な分泌がパニック発作と関係していると考えられています。ノルアドレナリンは、青斑核という部分から分泌されます。ノルアドレナリンは血圧や心拍数をあげ、パニック発作の引き金になります。

ノルアドレナリンの過剰な分泌によって、不安感や恐怖感が強まります。そしてノルアドレナリンは視床下部にも影響し、動悸やめまいといった自律神経症状を引き起こします。

これに対しセロトニンという物質には、不安や緊張状態を緩らげる効果があります。セロトニンとノルアドレナリンという二つの物質がバランスをとって、身体的・精神的な安定をもたらしています。パニック障害ではそのバランスが、ノルアドレナリンに過剰に傾いた状態になっています。

最後のGABAは、脳の活動を抑える働きがあります。このため、不安や恐怖を落ち着ける働きがあります。パニック障害の患者さんでは、前頭前野や偏桃体などでのGABA受容体が減少し、活動が低下していることが分かっています。

 

危険でもない状況でも脳が誤作動して、本来不安に伴って分泌されるはずの物質が大量に生産されてしまうのがパニック障害といえます。誤作動のもとは止めるのが難しいため、神経伝達物質の働きを整えることで治療のアプローチをしていきます。

ノルアドレナリンのバランスを整えるため、それを抑制するセロトニンを増加させる抗うつ剤が効果を認めます。セロトニンだけを増加させるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使われることが多いです。また、GABAの働きを強める抗不安薬が使われます。

 

まとめ

パニック障害は様々な原因が積み重なって結果として、脳の機能的な異常が起きていると考えられています。遺伝よりも環境の影響が大きく、パニック障害は誰にでも起こりうる病気です。

パニック障害では、人種や性別によっても発症のしやすさが異なることから、遺伝要因は間違いなくあります。しかしながら詳しいことは分かっておらず、複数の遺伝子が関与していることがわかっています。

パニック障害では環境要因としては性格傾向やストレスはもちろんのこと、喫煙やカフェイン、年齢や性別といったことも要因のひとつです。

パニック障害では、偏桃体の過活動によって、恐怖回路全体が活動亢進していると考えられています。青斑核から分泌されるノルアドレナリンが、パニック発作と大きく関係していると考えられています。