強迫性障害で悩んでいる方へ、仕事や学校での対処法

アイコン 2016.5.9 強迫性障害

強迫性障害の患者さんは、強迫観念によるとらわれてしまい、不安や不快感を打ち消すために強迫行為をしてしまいます。

止めたくても止められないので本人も苦しんでいるのですが、周りからみると理解しずらい病気です。心の弱さなどと誤解を受けることも少なくありません。

強迫性障害の患者さんは、平均発症年齢が20歳前半の病気です。大学生~新社会人で発症していくことが多く、学校や仕事での影響が大きな病気になります。

これらが重なって、強迫症状が悪化してしまい自宅から出られなくなってしまう方もいらっしゃいます。

ここでは、強迫性障害の患者さんでの学校や仕事に対する考え方を見ていきたいと思います。強迫性障害を克服してかわりなく生活できるために、どのようにしていけばよいのかを考えていきましょう。

 

1.強迫性障害の症状経過と学業や仕事への支障

強迫症状は少しずつ悪化していき、学校や仕事に通えなくなり自宅に引きこもってしまうこともあります。

強迫性障害の症状の程度は、患者さんによっても様々です。

強迫症状に苦しみはあるものの、何とか学校も仕事もこなせている人もいます。その一方で、自宅に引きこもってしまって何もできなくなってしまう人もいます。

強迫障害の患者さんは、いきなり重症から発症するわけではありません。少しずつ強迫症状が悪化していき、学校や仕事への影響が大きくなっていくのが一般的です。強迫症状のきっかけは、日常のストレスの中から生まれることが多いです。

テストのプレッシャー、責任感の大きな仕事など、そういった日常のストレスが行き場をなくして、強迫症状が始まっていきます。最初は自分でもそこまで気にならないのですが、少しずつそれがエスカレートしていきます。

それが目立ってくると、強迫観念によって、周囲からの目を感じるようになります。自分でもバカバカしいと思いながらも、強迫行為をやめられません。周囲から誤解され、奇異な目で見られることも少なくありません。

そして強迫行為自体でも、物理的な仕事効率が低下していきます。同じ書類を何度も確認しなくてはいけなくなったり、外出するたびに手洗いを長時間しなくてはならなくなったりします。

このようなストレスが重なることで、さらに強迫症状が悪化していくという悪循環となってしまいます。すると次第に、強迫観念のきっかけから逃げるようになっていきます。しかしながら逃げれば逃げるほど、強迫観念がますます強まってしまいます。さらには新しいきっかけで、強迫観念が湧いてくるようになってしまいます。

こうして学業や仕事を続けていくことが困難になっていきます。不登校や欠勤が重なっていくようになり、しまいには自宅から出られなくなってしまうのです。

 

強迫性障害の症状の重症度は、Y-BOCSという心理検査でおおよそ評価することができます。Y-BOCSでは、軽度・中等度・重度・極度の4段階に分けて評価されます。

詳しく知りたい方は、「強迫性障害の重症度をY-BOCSでセルフチェックしてみよう」をお読みください。

 

2.強迫性障害では学校や仕事はどういう場所なのか

強迫症状は、職場や学校では周囲の目があるためにガマンできている部分があります。周囲に理解をしてもらいながら仕事や学校を続けていくのが、もっとも治療にプラスです。

強迫性障害の患者さんでは、学校や仕事に言っていること自体はとても意味があることです。というのは、強迫症状は社会生活の中でガマンできている部分があるからです。それは2つの理由があります。

学校や職場では、人目があるために強迫行為をしたくないという気持ちが働きます。そして時間にも制約があるため、ガマンして次の行動にうつらなければいけないという状況にさらされます。

強迫行為をするということは一種の回避行動になります。強迫行為を行うことで、強迫観念による不安や不快感を和らぐためです。学校や仕事といった社会生活は、回避行動をとれなくしているのです。ですから、仕事を休職したとたんに自宅での強迫症状が悪化することもあります。

 

学校や仕事は続けた方がよいのですが、ただ耐え忍んでいるだけですと治療は前に進みません。強迫観念にさらされ、それを我慢して不安や恐怖が克服できたということを認識しながら行っていかなければ治療にはなりません。

強迫性障害は、自分で荒療治により克服することは困難な病気です。薬物療法と精神療法を組み合わせてしっかりと治療していく必要があります。そして治療を行っていることを、できることなら周囲の方に理解してもらうべきです。強迫性障害の治療は日常生活の中で行っていくので、周囲のサポートを得ながら進めていくことが大切だからです。

ですから強迫性障害の治療では、「相談すること」がとても大切です。

まずは専門家にしっかりと相談して治療に望んでください。そして会社と家族にも相談しましょう。周囲の理解がある中でしっかりと治療を行っていくことが、強迫性障害を克服していく一番の近道になります。

 

3.強迫性障害をどのように相談したらよいのか

強迫性障害の治療では、「相談すること」の大切さをお伝えしたかと思います。

強迫性障害では、自力で克服するのは困難です。そして多くの患者さんでは、薬物療法と精神療法を組み合わせて行っていくこと必要があります。ですから、精神科・心療内科に相談いただきたいのです。

強迫症状で学校や仕事で悩んでいる患者さんの多くは、すでに周りの方も気づいていることが多いです。言うべきかで悩んでいる患者さんも多いですが、理解してもらいながら治療をすすめていく方が治療的です。

ここでは、どのように会社に相談していけばよいのかお伝えしていきます。

※もちろん家族の理解を得るのも大切です。家族の方には、「強迫性障害の患者さんへの家族の関わり方」をお見せください。

※学校では、スクールカウンセラーに相談してみましょう。

 

3-1.専門家に相談する

精神科や心療内科の病院で相談しましょう。強迫性障害の治療では、精神科医に診てもらうべき疾患です。なかには内科の先生が精神科の患者さんをみていることがあるので、注意しましょう。

強迫性障害の治療は、専門家に相談することから始まります。

強迫性障害の治療は専門性が高く、精神科医に診てもらうべき疾患です。というのも、大きく2つの理由があります。

強迫性障害は、最近になって不安障害とは別の病気として分けられました。もともと不安障害に組み込まれていた病気なので、精神科医でなければこのことを理解していないことが多いです。

その根拠のひとつとして、強迫性障害では薬の反応が他の不安障害と異なることがあります。一般的に薬の効きに時間がかかり、そして高用量が必要になります。このことを知らなければ、お薬が中途半端な量になってしまうこともあります。さらに高用量のお薬を使うと、副作用も多くなります。精神科のお薬に使い慣れている必要があるのです。

このため、精神科医にしっかりと受診するようにしましょう。

精神科・心療内科の受診に関して心配な方は、「精神科・心療内科の受診のイメージと流れ」をお読みください。

 

3-2.会社に相談する

上司に直接相談できれば一番ですが、難しい場合は人事総務・産業医・主治医が介入する方法があります。

強迫性障害の患者さんは、職場で理解してもらいながら治療をすすめていくことが理想です。

理解してもらえているという安心感もうまれますし、相談にのってもらったりフォローもしてもらえる可能性があります。仕事の内容に関して業務調整してくれることもあります。

その中で少しずつ、強迫観念に立ち向かっていくのが最も治療的な環境になります。

しかしながら、「職場にはバレたくない」という気持ちの方も多いかと思います。もしも強迫症状が気づかれていないのでしたら、主治医と治療をすすめていきながら相談してもよいと思います。

もし気づかれているのでしたら、周囲からあらぬ誤解を避けるためにも強迫性障害に関して会社と共有した方がよいかもしれません。

それでは職場にはどのようにして伝えればよいでしょうか?そのルートとしては 4つあります。

ど の場合も、「少しずつ強迫性障害を克服したい」という前向きな部分を伝えた方がよいかと思います。

できるならば、直接上司に自分から相談する方がよいで しょう。上司に相談しにくい場合は、人事・総務部の担当者に相談してみるのも方法です。上司にどのようにアプローチすればよいか、またこれからの仕事のやり方について相談にのってくれるでしょう。

会社の関係者に話しにくい場合は、産業医に相談するのも方法です。50人以上の従業員がいる事業所では、産業医が月1回以上は必ず訪問しています。産業医は外部から来た医者ですので、立場上は第三者です。情報コントロールを上手くしてもらいながら、会社にどのように伝えるのかを相談しましょう。

①~③をしても職場の理解が得られない場合は、主治医から就労に関する意見を書いてもらう方法しかありません。具体的に書かれすぎてしまうとマネージメントができなくなってしまうので、「適切な業務上の配慮が望ましい」といった具合に診断書をお願いしてみましょう。

 

4.強迫性障害を仕事や学校で克服していくには?

不安階層表を作成して、できることから少しずつ成功体験を積み重ねていくことが大切です。

薬物療法によってお薬の効果が出てくると、日々の生活の中で精神療法を行っていきます。強迫性障害の精神療法は、暴露反応妨害法を中心に行っていきます。苦手なことに対して、少しずつ慣れていく治療法です。

まずは自分自身の強迫症状を見返してみましょう。不安や不快感の程度を100点満点にして、不安階層表を作成します。

強迫性障害の不安階層表(PDF)

このなかで、点数が低くて取りくみやすいものから苦手なことに立ち向かっていきます。恐れていることに身をさらし(暴露)、それを打ち消すために行う強迫行為をがまんします。(反応妨害)

不安は永遠に続くものではなく、少しずつ落ち着いていくということを身体に理解させていきます。少しずつ恐怖記憶を、新しい成功記憶で置き換えていくのです。そして少しずつ、不安をコントロールできるようにしていきます。

例えば上司に相談ができるのでしたら、業務調整をしてくれることもあります。決して業務量を減らした方がよいということではありません。上司と相談しながら、少しずつできることの範囲を広げていきましょう。

暴露反応妨害法について詳しく知りたい方は、「暴露反応妨害法(エクスポージャー)とはどういう治療法なのか」をお読みください。

 

5.うつ状態になってしまった場合は…

うつ状態になると考え方が極端になり、悲観的な考えになってしまいます。それが強迫性障害の悪化につながることがあるので、しっかりと休んで休養しましょう。

強迫性障害の患者さんでは、職場の理解を得ながらできる限り学校や仕事を続けていった方が治療的であることをお伝えしたかと思います。

しかしながらそうはいっても、不安や緊張と日々戦っていくのはストレスがかかります。そんな中で、気分が落ちこんだり気力が出なくなってしまって、うつ状態になってしまう患者さんもいらっしゃいます。

そのような時は無理してはいけません。しっかりと休んで治療をすることも大切です。うつ状態になってしまうと、考え方が極端になりがちです。

「休んでしまったら二度と戻れなくなるんじゃないか」
「職場復帰した時に雰囲気が悪くなるんじゃないか」

といった悲観的な考えになってしまいます。

こうして無理して仕事を続けていると、むしろ強迫症状が強まって仕事への支障が目立つようになってしまいます。自己管理ができていないと、会社でも評価を落としてしまいます。

このような時は仕事をしっかり休んで療養した方がよいです。しっかりと心身の調子を整えて復職できるようになったら、産業医を交えて相談していきましょう。

 

6.強迫性障害の方へ職場でできる配慮とは?

精神疾患に対する偏見をなくしてください。強迫性障害の患者さんは、もともとは几帳面で緻密な方が多いです。本人と相談していただきながら、できる範囲で業務内容を調整してください。

最後に、これらを踏まえて職場ではなにができるかについて考えていきましょう。

もっともお願いしたいことは、患者さんに対する偏見をなくしていただきたいということです。強迫性障害の患者さんは、もともとは几帳面で細かい方が多いです。このような性格は、社会で求められている長所でもあります。

ストレスなどが重なって強迫症状が認められますが、治療によって症状が落ち着けば本来のよい面が発揮されるのです。

強迫性障害は治らない病気ではなく、しっかりと治療することによって良くなっていく病気です。しかしながらすぐに治る病気ではなく、日常生活の中で根気強く治療をしていくことが必要な病気なのです。

職場は仕事をするための場所ではありますが、相応の仕事を与えながら治療の場としていただけると医師としては助かります。決して負荷を減らすというのではなく、業務内容をよく相談して、本人の抵抗が少ないものから少しずつできることを広げていきます。

少なくとも本人が強迫行為を行っていることに対して、許容する心を持っていただけるだけでも本人はとても落ち着きます。個人情報の問題もあるので、本人の同意を上で、できれば関係部署で共有できた方がよいかと思います。

治療的な関わりは会社の方は難しいと思いますが、良くなってきている時には本人の努力の過程を褒めていただけると治療のエネルギーになります。

 

まとめ

強迫症状は少しずつ悪化していき、学校や仕事に通えなくなり自宅に引きこもってしまうこともあります。

強迫症状は、職場や学校では周囲の目があるためにガマンできている部分があります。周囲に理解をしてもらいながら仕事や学校を続けていくのが、もっとも治療にプラスです。

不安階層表を作成して、できることから少しずつ成功体験を積み重ねていくことが大切です。

うつ状態になってしまうと考え方が極端になり、悲観的な考えになってしまいます。それが強迫性障害の悪化につながることがあるので、しっかりと休んで休養しましょう。

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