対人恐怖症の症状とは?どのような恐怖があるのか

アイコン 2016.4.22 恐怖症

対人恐怖症は、その症状の程度は人によって様々です。「人見知り」や「人付き合いが苦手」といった程度の方から、「自分は醜いのではないか」「誰とも接したくない」という方もいます。

対人恐怖症は、対人関係の場面で過度な不安が生じてしまい、他人から悪くみられてしまうのではという恐れから対人関係を避けようとしてしまう病気です。

対人恐怖症は、長らく日本の文化特有の精神疾患としてみなされてきました。海外でも同様の患者さんが認められることが分かり、社交不安障害として診断基準でも取り上げられるようになりました。

ただ対人恐怖症の重度の方は、自分のにおい、視線、容姿、表情などが周囲の人に嫌な思いをさせているのではと確信めいていることもあります。

ここでは、対人恐怖症の代表的な症状をお伝えしていきます。対人恐怖症の症状をどのように考えていくのか、みていきましょう。

 

1.対人恐怖症の本質的な症状とは?

他人から否定的に見られるのではという恐怖や、他人に迷惑をかけてしまうのではという恐怖の少なくともどちらかが認められます。

まずは対人恐怖症の本質的な症状について考えていきましょう。

対人恐怖症は、人と関わる状況での過度な恐怖や不安があります。その根底には、2つの恐怖の少なくともどちらかが存在しています。

対人恐怖症の症状の程度は、この2つの恐怖のバランスで決まっています。

対人恐怖症の症状が軽い方では、前者の「他人から悪くみられるのではないか」という恐怖が存在しています。重い方では、後者の「他人に迷惑をかけてしまうのではないか」という恐怖が存在しています。なかには、「自分は周囲に迷惑をかけている」と確信めいてしまう方もいます。

日本人は仲間や組織との調和を重んじる文化で、謙虚で控えめなことは美徳とされてきました。ですから海外に比べると、「他人に迷惑をかけてしまうかもしれない」という恐怖が強い傾向にあります。

対人恐怖症の患者さんは、このような恐怖心から対人場面を避けようとします。その結果ますます恐怖心が強まって悪循環してしまいます。こうして引きこもってしまったり、自尊心を傷つけてしまう方が多いのです。

 

2.対人恐怖症の症状による診断の違い

対人恐怖症は社交不安障害と診断されることが多いですが、他人への迷惑を確信している場合は身体醜形障害や妄想性障害と診断されます。

対人恐怖症は、他人と接するときに過度な不安や緊張が生じて、そのために「バカにされるのではいか」「相手に不快な思いをさせるのではないか」と恐れ、対人関係をできるだけ避けようとする病気です。

対人恐怖症は、対人関係において恐怖を感じる病態をひっくるめた概念です。アメリカやヨーロッパの診断基準であるDSM-ⅤやICD-10での疾患概念とは、少し異なってきます。診断基準に従うと、おおむねは社交不安障害と診断されますが、重症になると身体醜形障害や妄想性障害の身体型として診断されることもあります。

対人恐怖症では、自分の身体的な欠点にとらわれてしまいます。周りから見たら些細なことであっても、それに注意が向いてしまいます。

具体的には、

「汗を書いてしまったらどうしよう」
「顔が赤くなったらどうしよう」
「声が震えてしまったらどうしよう」

といった現実的な内容から、

「自分のにおいで嫌な思いをしているのではないか」
「自分の視線が相手に不快感をあたえるのではないか」
「自分の容姿が相手に迷惑をかけるのではないか」

といった妄想的な内容があります。その恐怖の確信の程度は様々で、「このような恐怖は不合理だ」と感じる方は社交不安障害と診断されます。一方で、信じ込んでいて確信めいている方は、身体醜形障害や妄想性障害と診断されることがあるのです。

おおむね対人恐怖症≒社交不安障害ではあるのですが、完全に同じ病態とはいえないのです。

 

3.対人恐怖症の症状にはどのようなものがあるか

対人恐怖症では、精神症状と身体症状が交互に影響しあって、症状をますます悪化させていきます。対人恐怖症の症状を精神症状と身体症状に分けて考えてみましょう。

 

3-1.対人恐怖症の精神症状

回避行動によって自己評価が低下し、ますます予期不安が高まります。この恐怖の悪循環が、対人恐怖症を悪化させていきます。

人は多くの人と関係を築きながら生きています。家を出れば、街は人であふれています。学校や仕事にいけば多くの人間関係があり、子育てをしていてもママ友達やご近所などの人間関係が必ずあります。

対人恐怖症の患者さんは、こうした社会生活の中で傷つきやすい状況にあります。人間関係を恐れてしまって、できるだけ避けるようになります。社交的な人と自分を比較してしまって、「自分はダメだなぁ」と自己評価も下がってしまいます。

このように回避行動をとってしまうことで、さらに人間関係に関して苦手意識が強まります。こうしてハードルが高くなってしまい、失敗してしまうという悪循環となってしまいます。

症状が酷くなってしまった方の中には、自宅に引きこもってしまって学校や仕事に行けなくなってしまう方もいます。当然ストレスになりますので、気持ちが落ちこんでうつ状態になってしまうこともあります。不安が対人関係だけでなく、さまざまな領域に広がってしまうこともあります。

 

3-2.対人恐怖症の身体症状

過度な不安や緊張によって、さまざまな自律神経症状が認められます。

対人恐怖症では、他人から自分に注目が浴びるような状況になると、恐怖とともに身体の症状があらわれます。この身体の症状は、緊張が強すぎることによる症状です。

普段私たちも緊張すると、汗をかいたり、胸がバクバクしたりするかと思います。不安や緊張に対して自律神経の交感神経が優位となり、身体が身構えているのです。対人恐怖症では、その緊張が非常に強烈です。

自律神経症状としては、動悸・息苦しさ・手足や声のふるえ・めまいや吐き気・腹痛や下痢・口の渇き・大量の発汗・赤面などがあります。これらの身体症状に注意が向いてしまって、ますます不安や緊張が高まってしまいます。

 

4.対人恐怖症での恐怖にはどのような種類があるか

対人恐怖症に関係して、世間ではさまざまな「〇〇恐怖」があります。いずれも正式な病名というわけではなく、一般的にいわれている呼び方です。それらの恐怖は、大きく2つに分けることができます。

この2つに分けて、対人恐怖症で見られる恐怖の内容をご紹介していきます。

 

4-1.身体の症状や欠点に関する恐怖

赤面恐怖・発汗恐怖・ふるえ恐怖・吃音恐怖・排尿恐怖・表情恐怖・ガス恐怖・視線恐怖・自己視線恐怖・自己臭恐怖・醜形恐怖などがあります。

対人恐怖症では、自分の身体的な欠点にとらわれてしまいます。誰でも気になるような身体症状もあれば、周りから見たら些細なことにとらわれてしまうことがあります。

前者を緊張型対人恐怖症、後者を確信型対人恐怖症と分類されることもあります。確信型対人恐怖症の方の特徴としては、以下の4つがあげられます。

自己視線恐怖・自己臭恐怖・醜形恐怖は、いわゆる確信型対人恐怖症に近いことが多いです。この違いを意識しながら、そのような恐怖についてみていきましょう。

①赤面恐怖

赤面恐怖とは、緊張して顔が赤くなってしまうことへの恐怖です。周囲から見れば些細なことで、場合によっては好ましく受け取られることすらありますが、本人は非常に悩んでいます。

「こんなことで顔が赤くなってしまうなんて恥ずかしい」
「バカにされてしまうかもしれない」

このように考えてしまい、「自分が悪く思われてしまうのでは」という恐怖が根底にあります。本人としても、どうして赤面してしまうのか理解できないことが多いです。

詳しく知りたい方は、「赤面症(赤面恐怖症)にみられる症状と原因とは?」をお読みください。

②発汗恐怖

誰しも、緊張して汗をかいたことがあると思います。緊張して汗をかくことは自然なことなのですが、汗は他人からみてもすぐに分かってしまいます。

発汗恐怖も、「自分が悪くみられるかもしれない」という恐怖があります。このような恐怖がある方は、体感異常も伴っています。クーラーが効いているような部屋でも、異様に熱く感じてしまって汗をかいてしまいます。

③震え恐怖

緊張すると身体がこわばります。筋肉がこわばるとふるえてしまいます。緊張して手足が震えるという経験も、みなさんがされていると思います。

手足が震えるのも、他人からはすぐにわかります。震え恐怖も、他人からの評価を気にする恐怖になります。

④吃音恐怖(どもり恐怖)

吃音恐怖とは、いわゆる「どもり恐怖」です。緊張してしまうと、声帯がこわばります。そのまま声を出してしまうと、声が震えたり、スムーズに言葉が出なくなってしまいます。

これも相手にすぐにわかってしまうので、他人からの評価を気にする恐怖です。

⑤排尿恐怖

排尿恐怖とは、他の人が近くにいるときにトイレができなくなってしまいます。排尿は一般的にはリラックスしている状態で行われます。順番待ちをされていると、余計に排尿できなくなってしまいます。

排尿恐怖は理解ができない方もいらっしゃるかもしれません。そんな方は、誰もみていない自分の部屋で少しだけ排尿してみてください。おそらくほとんどの方が、排尿できません。

⑥表情恐怖

表情恐怖とは、自分の表情をどのように作っていいのかわからなくなってしまいます。人とコミュニケーションをとっているときに、表情がこわばってしまって不自然になってしまうことを恐れています。

他人からどう自分がみられるのかを恐れています。

⑦ガス恐怖(おなら恐怖・腹鳴恐怖)

ガス恐怖とは、「ガスが漏れて周りに迷惑になるのではないか」「周りの人からバカにされるのではないか」と恐れることです。「お腹が鳴ってしまうのではないか」という腹鳴恐怖も同じように腸管内のガスによる恐怖になります。

確かにおならやお腹が鳴るのは恥ずかしいことですが、誰しも生じる生理的なことです。過度にとらわれてしまうことで、ストレスから過敏性腸症候群になる方もいらっしゃいます。腸の動きが乱れて便秘や下痢になるので、さらにガス恐怖が悪循環してしまいます。

⑧視線恐怖

視線恐怖は、他人の視線が気になってしまう恐怖です。対人関係がある時はもちろんのこと、患者さんによっては日常生活でも視線に過敏となってしまいます。

視線恐怖に関しては、慎重に評価していく必要があります。他人からの評価を気にしてしまう恐怖からの延長であることもあれば、場合によっては統合失調症の初期症状としての被注察感であることもあります。

⑨自己視線恐怖

視線恐怖は人から見られている恐怖でしたが、自己視線恐怖は自分の視線が相手に迷惑をかけるかもしれないという恐怖です。

「目線が泳いでしまって変な風に思われるのではないか」「どこを見ていいかわからない」という評価を気にする要素が強い方もいれば、「自分が見つめることで嫌な思いをさせてしまう」と他人への迷惑を恐れる方もいます。

自己視線恐怖では、周りからは理解がしづらくて妄想的に思い込んでいることもあります。

⑩自己臭恐怖

自分の身体から嫌なにおいが出ているのではないかと恐れています。そのせいで「他人からどう見られるのか」「他人に迷惑をかけるのではないか」と恐れています。

周囲からは気にならない程度の臭いだとしても、本人は「自分が臭い」と確信しています。その結果として、他人に迷惑をかけたり、嫌われてしまうのではと悩んでいます。

そして、関係ないことを自分の臭いのせいだと結び付けてしまいます。例えば電車で前に座っていた人がマスクをつけたら、自分の匂いがしたせいだと思い込んでしまうのです。

⑪醜形恐怖

醜形恐怖は、自分の身体の一部や全部が醜いと思っていて、そのせいで人に迷惑をかけているのではと恐れています。

まったく醜さなどない方であったり、気にしている部分が些細なことで理解できないことも多いです。本人にとっては醜いと妄想的に確信めいていて、美容整形などを繰り返す人などにも多いです。

 

4-2.苦手なシチュエーションに関する恐怖

スピーチ恐怖・電話恐怖・会食恐怖・デート恐怖・書痙などがあります。

対人恐怖症では人から注目を浴びることを苦手としているので、苦手なシチュエーションも当然あります。これらのシチュエーションでは、対人恐怖症の症状が認められやすいということになります。

①スピーチ恐怖

人前で発表して話をする機会は、誰でも緊張します。

発表やプレゼンでは、多くの人から自分に注目が集まる代表的な機会です。対人恐怖症の方は苦手とする方が多く、一般的にスピーチ恐怖といわれています。

仕事であってもプライぺートであっても、スピーチをする機会はあります。仕事であればプレゼンや会議、朝礼など、プライベートであれば地域のイベントやPTAなどの集まり、結婚式などがあります。

②電話恐怖

対人恐怖症では、電話を苦手にする患者さんが多いです。電話では相手の表情も動作もみえません。相手の様子がわからないため、相手に変に思われていないかと想像してしまいます。

そんな中で、「ちゃんと必要なことを伝えられているだろうか?」「声は震えていないだろうか?」などと緊張感が高まり、電話恐怖になってしまいます。

③会食恐怖

レストランなどで外食をすると、いろいろな人から見られていると感じて緊張してしまいます。とくに相手が親友や家族でない場合、相手に対しても迷惑をかけていないかと気になってしまいます。

このようにして筋肉がこわばってしまい、「うまく料理を切れないのではないか?」「うまく喉を料理が通らないのではないか?」「おいしそうに見えないのではないか?」と気になって、会食恐怖になってしまいます。

④デート恐怖(異性恐怖)

女性よりも男性に多いのですが、異性とデートすることで恐怖を感じる方もいらっしゃいます。

彼女と会うときに緊張しすぎてしまったり、一緒にいることが周りから注目されているのではと気になってしまいます。その結果として、結婚や家庭をもつことが遅れがちになってしまうことがあります。

⑤書痙

人前で字を書くときに、手が震えてしまって困る方も多いです。このような症状を書痙といいます。〇〇恐怖ではありませんが書痙だけに困っている方もいるので、ここで取り上げました。

冠婚葬祭では、自分の名前を記帳する かと思います。「上手く書かなければいけない」「受付の人がみている」といった意識が働いてしまうのです。仕事でも、お客さんに書いて説明しようとすると きに、手が震えて困ってしまうことがあります。学生であれば、黒板に字を書くときに困る方もいらっしゃいます。

 

まとめ

対人恐怖症は社交不安障害と診断されることが多いですが、他人への迷惑を確信している場合は身体醜形障害や妄想性障害と診断されます。

世間ではさまざまな〇〇恐怖症という病気が広まっていますが、対人恐怖症が根底にある方も多いです。対人恐怖症は治療をすることでよくなっていく病気です。