解離性障害とは?解離性障害の症状と種類

アイコン 2016.11.21 解離性障害
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私たちは日々の生活の中で、様々なことを経験しています。私たちはそれらに対して感覚や感情を持ち、心の中で考えたり、行動といった形で心身の行為を行います。

これらの行為はひとつの人格のなかで統合されていますが、解離性障害はこれがうまく統合できなくなってしまう病気です。

感覚や情動、意識や記憶、自己同一性といったものが切り離されてしまい、それによって離人感・現実感喪失症や解離性健忘、多重人格と呼ばれる解離性同一性障害といった病気になります。これらは議論はありますが、現在のところ連続する病気と考えています。

このように解離性障害とは、ストレスによって感覚や情動、意識や記憶、自己同一性といったものが切り離されてしまう病気です。

かつてはヒステリーとも呼ばれていた解離性障害、現在では様々な病名に分けられています。ここでは、解離性障害の症状と種類について詳しくお伝えしていきます。

 

1.解離性障害の症状にはどのようなものがあるのか

解離性障害には、その症状の表れ方によって様々な種類に分類されています。転換性障害やPTSDなどと関連の深い病気です。

解離性障害の原因についてみていく前に、解離性障害とはどういう病気なのかをお伝えしていきます。

私たちは日々の生活の中で様々なことを経験し、感覚や感情を持ち、思考や行動をしています。これを一つの人格のなかで統合できるからこそ、「私の感覚」「私の体験」「私の人生」といったように認識することができます。

解離性障害では、このような統合がうまくできません。ストレスによって感覚や情動、意識や記憶、自己同一性といったものが切り離されてしまいます。その症状の表れ方によって、さまざまな種類に分類されています。

DSM-Ⅴの最新の診断基準では、解離性遁走は解離性健忘の一つのタイプとして格下げされています。また、解離性運動障害や解離性けいれん、解離性知覚麻痺は、身体表現性障害の転換性障害に含まれます。

そして解離性障害は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やASD(急性ストレス障害)に合併することが多いです。診断基準でも、解離性障害をPTSDのカテゴリーに含めるという意見もでていました。結局は両者はカテゴリーが分けられ、PTSDの下位分類として「解離タイプ」というものが作られました。

このように解離性障害には、さまざまな症状の表れ方があります。これらの症状は質的に同一なのかどうかも、意見が分かれるところです。

 

2.解離性障害の種類による症状の具体例

解離性障害は、症状の表れ方によって病名が分けられています。

解離性障害には、以下のように様々な種類があることをお伝えしました。これらの種類ごとに、具体的な症状を見ていきたいと思います。

①離人感・現実感喪失症

離人感・現実感喪失症とは、自分の体や周囲の現実世界に対して距離ができたと感じる感覚の解離になります。

離人症と現実感喪失症に分けられますが、どちらも「自分が自分である」という自我意識が障害されています。

離人症では、「自分がよそよそしく感じる」「自分が演技しているようだ」「外から自分が見られている感じがする」といった自己に向かうといった違いがあります。現実感喪失症では、「まわりの人がマネキンのように感じる」「まわりの景色に現実感がない」といった知覚に向かいます。

②解離性健忘

解離性健忘とは、ストレスに感じたことの記憶をなくしてしまう記憶の解離になります。最近の重要な出来事の記憶がなくなってしまうことが一般的です。特にストレスを感じたいやな出来事の記憶がなくなってしまいます。

記憶喪失の範囲はそれぞれで、部分的なこともあれば、時には自分の生れてからの記憶がなくなってしまう「ジェイソンボーン」の状態になってしまうこともあります。ある決められた出来事だけが想起できないこともあります。

③解離性遁走

解離性遁走とは、ストレスに感じて記憶がなくなり、どこかに移動してしまう解離になります。

解離性健忘が前提として存在し、それに加えて意図的に家庭や職場から離れようとする行動が伴います。我に返ると知らない場所にいて、どのようにしてそこに来たのかもわからないといった形です。そこに生活史健忘(自分に関するエピソードが思い出せない)が重なることもあります。

遁走期間中は、第三者からみれば全く正常に映ることもあり、長期にわたることもあります。

④解離性同一性障害

解離性人格障害とは、いわゆる多重人格とよばれるようなアイデンティティの解離になります。心理療法による治療者の誘導によって作られた医療による病気だという意見もあるくらいで、存在自体も議論があるところではあります。

2つ以上の別の人格が一人のなかに存在していて、それぞれが別々の記憶や好みがあって、行動します。そしてどちらかが表に出てきています。多くの場合、他の人格の記憶の中に入ることはなく、お互いの人格の存在に気づかないことが多いです。

トラウマとの関連が強く、それに関連した出来事で人格変化が起きることもあります。

⑤解離性運動障害

解離性運動障害とは、ストレスから身体の機能を失う運動の解離になります。

もっとも典型的なものは、身体を動かす機能が麻痺してしまうことです。脱力してしまって急に歩けなくなってしまったり、奇妙な歩行になってしまったりします。ときに振戦やふらつきが認められますが、大げさに誇張されているようなこともあります。

声が出なくなってしまう心因性の失声も、解離性運動障害になります。

⑥解離性けいれん

解離性けいれんとは、ストレスからけいれんが認められる解離になります。

けいれんは一般的に、てんかん発作で生じます。解離性けいれんでは、てんかん発作を無意識に模倣してしまいます。体をそるようなけいれん発作がみられたり、意識を消失してしまうこともあります。

しかしながらこれらの発作では、無意識に自分のことを守ってしまいます。舌を噛んでしまったり、転倒してけがをしてしまったり、尿失禁をしてしまうことは稀です。腕を持ち上げてあまたの上から話すと、自分の顔を避けて腕が落ちます。(arm drop test)

てんかんの患者さんは幼少期からつらい思いをしているため、解離性けいれんが混じってしまうこともあります。

⑦解離性知覚麻痺

解離性知覚麻痺とは、ストレスから知覚を失う感覚の解離になります。

例えば手の感覚がなくなってしまったり、視野がぼやけて見えなくなってしまうなど、私たちが近くしているはずのことが認識できなくなることがあります。感覚と視覚での知覚麻痺が多く、聴覚や嗅覚では少ないです。

このような解離性知覚麻痺では、医学的には説明がつきづらいことが多いです。例えば患者さんは、右手の掌の感覚がなくなったというように、身体の機能に基づいて症状が認められます。しかしながら神経の走行は、親指側・真ん中・小指側といったように、縦に走って支配しています。このように矛盾が認められるのです。

視野障害では、検査をするとどんどん視野が狭くなる「らせん状視野」や、通常視野は遠くなると広くなりますが、遠くにしても筒を除いているかのように視野が変わらない「筒状(管状)視野」などが特徴的です。

 

3.ヒステリーの概念から解離性障害と転換性障害へ

かつてはヒステリーと呼ばれていましたが、身体表現性障害(転換性障害)と解離性障害の2つに分けられています。これが同一の病態であるという意見も根強く、専門家でも意見が分かれています。

人類の歴史の中で、解離症状は古くから認められていました。多くは宗教やシャーマニズムなどに関連して、憑依体験などといった神秘体験として語られてこられました。

病気としての記述も、紀元前3世紀にさかのぼります。ヒステリーの語源の由来となった「子宮」の病気と考えられて、histeriaと考えられていました。子宮の窒息や子宮の移動によって症状が生じると考えられていて、窒息感と意識消失を二大特徴とされていました。

私たちも日常的に、ヒステリーという言葉を使うことがあります。「彼女がヒステリーを起こした」といったとすると、「癇癪を起した」とか「暴れている」とか、ときには「常軌を逸している」といった意味で使われるかと思います。

ヒステリーは、身体表現性障害という病気の概念が作られたことによって、解離性障害と分けられました。身体表現性障害とは、身体に症状は認めるけれども、身体疾患として診断が確定できないもののことになります。このため現在では、解離性障害=ヒステリーと呼ばれるようになっています。

ヒステリーは偏見を含む言葉であったため、解離性障害と堅苦しい名前になったことで診断と治療は進めやすくなったかと思います。しかしながら、本質的には転換性障害も解離性障害も変わらないという意見も根強くあります。

実際の臨床でも、転換症状と解離症状が同じ患者さんに認められることはとても多く、ともに心的外傷(トラウマ)との関連も深い病気でもあります。このことからも、共通する病態であるという考え方が根強いのです。

 

4.解離性障害の症状は同じなのか?

解離症状には様々なものがあります。その程度の重さの違いという考え方もあれば、質的に2つに分けられるという考え方もあります。

このように解離性障害では、様々な種類があります。「私」という人格に統合できない病気と考えれば、これらの病気はすべて解離性障害の概念に含まれます。

しかしながら、現実感・離人感喪失症では、他の解離性障害とは異なって記憶を失いません。ですから、これらは解離性障害なのかどうかという点も議論があります。国際的な2つの診断基準でも、意見が分かれています。

現実感・離人感喪失症はひとまとめにされていますが、細かく見ると現実感喪失症と離人症に分けられます。これらはどちらも、「自分が自分である」という自我意識が障害されていると考えられています。現実感喪失症では、「まわりの景色に現実感がない」といった知覚に向かいます。それに対して離人症では、「自分がよそよそしく感じる」「外から自分が見られている感じがする」といった自己に向かうといった違いがあります。

このような現実感・離人感喪失症の症状と、解離性健忘や解離性遁走、解離性同一性障害といった記憶障害を伴う解離症状は、果たして同じ症状なのでしょうか。この点については、連続する病気という考え方と、質的に異なる病気であるという考え方があります。

連続するという考え方としては、トラウマ(心的外傷)との関連性があげられます。トラウマへの防衛機制として、解離症状が段階的に認められるという考え方があります。

その一方で、これらの解離症状は質的に異なるとする考え方もあり餡ます。「離隔」と「区画化」の2つに分けて説明する考え方と、「空間的変容」と「時間的変容」の2つに分けて説明する考え方があります。これらをご紹介したいと思います。

 

①トラウマ(心的外傷)に対する防衛機制

PTSDと解離症状は、非常に深い関係があります。トラウマ(心的外傷)を受けた患者さんの多くは、何らかの解離症状が認められることがあります。

この時の解離症状は、トラウマ体験を一つの自分の中に統合できなくなるという障害としての側面がありますが、何とか適応していくための防衛機制としての犠牲という側面もあります。

このような防衛機制として、解離症状は大きく3つの段階に分けられるという考え方があります。

このように、解離症状は防衛機制の段階によって表れ方が異なってくると考えます。

 

②離隔と区画化

離隔とは、「日常生活体験の身体・自己・外界といった部分が分離する感覚の意識変容」と定義されています。

身体からの分離では、「自分の体ではないような感じがする」「なんだかしっくりこない」といったことから始まり、ひどくなると「身体から抜け出して自分をみている」といった体外離脱体験が認められます。

自己からの分離では、「自分が行っている感じがしない」「自分の身体がよそよそしく感じる」といった離人症状が認められます。外界からの分離では、「現実感がない」「まわりの風景がよそよそしい」「自分のと世界が膜につつまれているよう」といった疎隔(現実感喪失)が認められます。

これに対して区画化は、「本来なら統合できるはずの情報を、意識に上らせるのができなくなること」と定義されています。

身体に症状として出てきてしまう転換症状、健忘や遁走といった意識を分離されてしまう症状、解離性同一性障害にみられるような交代人格などがこれに含まれます。

 

③空間的変容と時間的変容

空間的変容とは、先ほどの離隔のことを指します。空間的変容では、「存在としての私」と「眼差しとしての私」が分離してしまっていると考えます。

私そのものが「存在としての私」にあるとき、「誰かがいる気がする」といった気配過敏症状、「ささいなことが気になってしまう」対人過敏症状などが認められます。他人からの眼差しを強く感じてしまうのです。

それに対して私そのものが「眼差しとしての私」にあるとき、「自分の体ではないような感じがする」といった離人症状、「身体から抜け出して自分をみている」といった対外離脱症状などが認められます。

それに対して時間的変容では、意識のもとになっている記憶や同一性といったものが変容してしまい、時間の流れの中で意識状態が突然に変わってしまうことです。

意識がなくなってしまうような健忘や遁走、交代してしまうような人格交代などが含まれます。

 

まとめ

このように、解離性障害には様々な症状の表れ方があります。

それぞれに病名がつけられていますが、これらの解離症状がすべて同じ質のものなのかについては議論があります。解離性障害はまだまだ概念が固まっていない病気のひとつになります。