適応障害とうつ病・自律神経失調症の違いはどこにあるのか

アイコン 2016.10.5 適応障害・ストレス性障害
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適応障害とは、環境に上手く適応できないことでストレスがかかり、心身の症状が認められる病気です。

環境が変化するタイミングに認められることが多く、本人と環境の間に大きなズレがあるときに適応障害と診断されます。生きていれば変化は絶えないので、適応障害は誰もがかかる可能性のある病気です。

ですが適応障害は、本来よりも広く解釈されることも多いです。ストレスに適応できないといえばすべての疾患が当てはまるので、暫定的に適応障害と診断されることが少なくありません。ですから、後になって診断が変わることもあります。

このため、とくに適応障害とうつ病の違いについて質問されることが多いです。ここでは、適応障害と混同されることが多いうつ病、自律神経失調症との違いについてみていきましょう。

 

1.適応障害と、うつ状態・自律神経失調症の違い

適応障害やうつ病などは「病名」になります。それに対してうつ状態や自律神経失調症は、「病気」ではなく「状態」になります。ですから適応障害では、うつ状態にも自律神経失調症にもなりうるのです。

まずはじめに、「病気」と「状態」の違いを正しく理解しましょう。

心の病気は、それぞれの特徴によって病名がつけられています。適応障害やうつ病は「病気」になります。どちらも国際的な診断基準に記載されていて、病気が定義されています。

適応障害は、本人と環境の間に価値観の埋められないギャップがあって、そのストレスによって心身の症状が認められているような病気になります。

それに対してうつ状態や自律神経失調症は、「状態」になります。うつ状態は落ち込みがひどい状態、自律神経失調症は自律神経のバランスが乱れてしまった状態になります。

適応障害は特徴的な症状はなく、ストレスによってとりうるすべての心身の症状が生じます。適応障害で多い症状としては、以下のようなものがあります。

これらの症状がうつ病や不安障害の診断基準を満たしていれば、「病気」として診断されます。しかしながらそこまでではないときは、「状態」になります。

ですからどのような病気であっても、ストレスによって落ち込みがひどくなったり、自律神経症状が認めらることがあります。適応障害でも同様で、抑うつ気分が目立つときは「適応障害・抑うつ状態」、自律神経症状が認められるときは「適応障害・自律神経失調症」といった形で診断されることもあります。

 

2.適応障害とうつ病の診断基準での違い

うつ病は、エネルギーの低下による精神症状が認められます。適応障害は、症状よりも原因によって診断されます。うつ病の診断基準を満たせば、うつ病の診断が優先されます。

適応障害とうつ病は、それぞれ別の病気になります。どのような違いがあるのか、みていきましょう。

適応障害には特徴的な症状はありません。適応障害の診断は、症状よりも原因をみて診断していきます。本人と環境の間に大きなギャップが原因となっている病気のことをいいます。心理的な要因が大きい心因性の病気になります。

それに対してうつ病は、精神エネルギーの低下による様々な精神症状で診断されます。うつ病の診断基準は、以下の①と②のどちらかの症状を必須として、9つのうち5つ以上が2週間認められることとなっています。

  1. 抑うつ気分(気分の落ち込み)
  2. 興味や喜びの減退(楽しみや興味がもてない)
  3. 食欲の異常・体重の変動(体重減少が多い)
  4. 睡眠の異常(不眠が多い)
  5. 不安・焦燥感
  6. 易疲労性・気力の減退
  7. 罪責感(自分を責めてしまうこと)
  8. 思考力低下・集中力低下・決断力低下
  9. 希死念慮(死にたいという考え)

うつ病は、原因というよりも症状で診断していきます。脳の機能的な異常が要因として大きい内因性の病気になります。

適応障害とうつ病にはこのような違いがあるので、うつ病の診断基準を満たすときはうつ病と診断されます。抑うつ症状が重症であればうつ病、そこまで重くなければ適応障害となるのです。

うつ病の診断について詳しく知りたい方は、「うつ病の診断基準とうつ状態との診断の違い」をお読みください。

 

3.適応障害とうつ病の実際の違い

病気の原因や症状の経過から判断していきます。うつ病の診断基準を満たしていなくても、適応障害よりも小うつ病やうつ状態と診断されることもあります。

診断基準での適応障害とうつ病は、「うつ病の診断基準を満たすかどうか」で判断されます。

実際には、原因や症状の経過から判断していくことが多いです。適応障害では、

といった特徴があります。それに対してうつ病は、

こういった特徴があります。ですから誰もがストレスになる環境で、明らかに精神的に消耗して心身のバランスを崩した場合は、適応障害と診断しないこともあります。

例えば月の残業が100時間を超えるような会社で働いていて、環境変化が重なって心身のバランスが崩れた場合などです。症状がうつ病の診断基準を満たさなくても、うつ病の一歩手前という意味合いで小うつ病(minor depression)や抑うつ状態として診断をつけることもあります。

 

4.適応障害は広く解釈して診断されることが多い

診断がつけられない場合に、適応障害と診断されることがあります。診断の印象を和らげて患者さんを守るためや、病名を受け入れられない時期に、暫定的に適応障害とつけられることもあります。

適応障害は本来、

といった特徴のある病気になります。しかしながら適応障害の診断基準には曖昧さがあり、広く解釈することができます。

極端に言ってしまえば、すべての病気はストレスによって悪化します。そして発症のきっかけにストレスが認められます。このストレスに上手く適応できないと広く解釈すれば、どのような病気でも適応障害となりうるのです。

さて、このように適応障害を広く診断するのはどのようなケースでしょうか。中にはしっかりと診断できていないということもあるかもしれませんが、多くの場合は社会的・治療的な理由です。

というのは、診断をハッキリとつけられないときや、ハッキリつけない方が良いときがあるためです。そのようなときに、とりあえずつける病名として適応障害はとても便利です。

ストレスによって心身の症状が認められるけれども診断が現時点でできない場合、適応障害と診断されることがあります。

診断ができないというのは、いろいろな場合があります。医師の診療能力がないという場合というわけではありません。精神疾患はそもそも、一時点だけではわからないことも多いのです。患者さんのことを知り、症状の経過をみていくうちに診断がついていきます。

 

また診断書を会社などに提出するのにあたっては、患者さんを守るために診断名をやわらかい印象の病名にすることがあります。そのときに適応障害を使うことがよくあります。

心の病気に対する社会の認識はだいぶ広がったとはいえ、いまだに根強い偏見があります。ですから患者さんのことを考えて、印象がやわらかい病名にするのです。

そして、治療の目的で適応障害と暫定的に診断しておくこともあります。本人が病気を受け止められないことがあります。自分の本当の姿と向き合うことには、非常に大きなエネルギーを必要とします。症状が悪いときに伝えて も、その大きさに耐えられません。さらに調子が悪化してしまいます。

病名を告げる時は、本人が直面化に耐えられる状況でなければいけません。ですから精神科医は、少しずつその状況を探りながら本当の病名を伝えていくのです。そのときに適応障害は、便利な病名のひとつになります。

詳しく知りたい方は、「なぜ精神科や心療内科では、病名や診断が告げられないのか」「精神科・心療内科での診断書の実情とは?」をお読みください。

 

まとめ

適応障害やうつ病などは「病名」になります。それに対してうつ状態や自律神経失調症は、「病気」ではなく「状態」になります。ですから適応障害では、うつ状態にも自律神経失調症にもなりうるのです。

うつ病は、エネルギーの低下による精神症状が認められます。適応障害は、症状よりも原因によって診断されます。うつ病の診断基準を満たせば、うつ病の診断が優先されます。

病気の原因や症状の経過から判断していきます。うつ病の診断基準を満たしていなくても、適応障害よりも小うつ病やうつ状態と診断されることもあります。

適応障害は、広く解釈して診断されることがあります。以下のようなケースになります。