適応障害の診断書の実情とは?適応障害の病名や休職期間について

アイコン 2016.10.9 適応障害・ストレス性障害
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適応障害は、環境と本人の価値観のズレが原因となり、うまく適応できずに心身の症状が生じる病気です。ですから適応障害は、本人の治療だけでなく環境に対してもアプローチしていくことが多いです。

病院やクリニックから環境にアプローチするためには、診断書で主治医としての意見をかいていきます。例えば職場が原因であった場合、直接会社の関係者と電話でやり取りすることは滅多にありません。

しかしながらこの診断書は、医師によっても書き方がまちまちです。とくに適応障害は、拡大解釈されて診断されることも多い病気です。ですから診断書を受け取る会社側も、どのように対処すればよいのか悩まれることも少なくありません。

ここでは適応障害という病気の実情も踏まえながら、適応障害の診断書について詳しくお伝えしていきたいと思います。適応障害という病名のもつ意味や休職期間についても実情をお伝えしていきたいと思います。

 

1.適応障害で診断書を会社に提出するケースとは?

環境調整をお願いする場合や、休職・復職の際に診断書を提出します。

適応障害は、他の病気に比べると診断書が書かれることが多い病気です。それは適応障害という病気が、環境調整することも治療のひとつになるためです。

適応障害の診断書で診断書を会社に提出するのは、以下の3つのケースがあります。

まず一つ目として、仕事をするうえでの配慮があれば何とかなると思えている場合です。そのようなときは、会社に診断書を提出することで環境調整についての意見を伝えます。

二つ目は、心身の状態から休職による自宅安静加療が必要な場合です。あまりにも状態が悪化すると、正常な判断ができなくなってしまいます。そのようなときに無理して仕事を続けると、悪循環でどんどんと悪化してしまいます。詳しく知りたい方は、「適応障害で休職すべき?適応障害での仕事の考え方と休職中の過ごし方」をお読みください。

そして最後の三つ目は、心身の状態が回復して復職が可能な場合です。主治医からの診断書があればすぐに復職可能というわけではなく、産業医の意見も含めて会社が判断することになります。

このように適応障害では、3つの場面で診断書が提出されます。

 

2.適応障害の診断書は、会社の立場も考える必要がある

本人のことだけでなく会社側の立場も考えなければ、結果的に患者さんに不利になってしまうことが多いです。

適応障害の患者さんは、会社側に不満を感じていることも少なくありません。不満とまでいかなくても、「こうして欲しい」「ここを変えてほしい」といった具体的な希望がある方もいるでしょう。

原則的に主治医は、本人の立場にたって診断書を書いていきます。とはいっても、患者さんが希望することを書けばよいのかというと、そうではありません。その結果として患者さんが得をするならば、それでもよいのです。ですが一方的な診断書では、患者さんが損をすることが多いからです。

会社はその診断書を受けとると、その意見を踏まえて対応を検討しなくてはなりません。そういう意味で診断書は、本人側から会社への一方向の要求となってしまいます。診断書を踏まえて、主治医と会社側が直接話をすることは滅多にありません。

会社側の立場にたってみれば、一方的な意見をされると対応に困ってしまいます。そのすれ違いは、本人への悪い印象につながってしまうことも少なくありません。

診断書を書くときは、ステークホルダーマネージメントが大切です。会社側がどうとらえるかも考えながら、すべてを望まずに本当に環境調整してほしいことをお願いする・・・そういった発想のほうが上手くいきます。

 

3.適応障害の診断書のもつ意味とは?

診断書は意見に過ぎないので、会社に強制力はありません。ただ会社には安全配慮義務があるため、何らかの対処は必要です。休職の診断書の場合は、ただちに休職させたほうが良いです。復職の診断書の場合は、産業医の意見も踏まえて判断します。

適応障害の診断書はどのような効力をもつのでしょうか?会社側は適応障害の診断書を受け取るということは、どのような意味を持つのでしょうか?

適応障害などの精神疾患は、その病状や治療内容が客観的に評価しにくい分野です。このため、まずは診断書の公的な意味を整理しておく必要があります。

会社と従業員である患者さんには、それぞれに権利と義務が絡み合っています。会社としては、従業員の安全配慮義務はありますが、業務契約の使用者としての権利があります。患者さんとしては、会社には自分の心身の健康を守ってもらう権利がありますが、業務契約としての労働者として労務を提供する義務があります。

診断書は、医師からの意見ということになります。それは強制力があるわけではありません。心身の健康に対する意見にすぎず、会社はそれに従わなければならないというものではありません。

ですが会社には安全配慮義務があります。医師から健康に関する意見が出ているにも関わらず、まったく配慮しなかった結果として重大な健康障害(自殺を含む)が生じると、会社に責任が生じてしまいます。

ですから会社側は事実上、診断書の通りではなくとも何らかの対処はしたほうがよいです。もっともよく問題となってくるのは、休職と復職の診断書の扱いです。

休職の診断書が提出されるということは、「主治医が生活ができるかどうかのレベルを下回った可能性があると判断した」ということになります。ですから理由の如何を問わず、直ちに休職をさせないと安全配慮義務違反となってしまいます。

復職の診断書が提出されたということは、「主治医が少なくとも生活ができるレベルは超えていると判断した」ということになります。仕事ができるかどうかの判断に関しては、厚労省も推奨していますが、産業医が意見することになっています。この意見を踏まえて、会社が判断するということになります。

この点を理解しながら、診断書の対処を考えていくことが大切です。詳しく知りたい方は、「精神科・心療内科での診断書の実情とは?」をお読みください。

 

4.適応障害の診断書の実情①-環境調整

環境調整は産業医を踏まえて、会社と相談しながら決めていくのが最も現実的です。就労上の配慮は具体的には書いてもらわないほうが良いです。

適応障害の診断書では、職場環境に関しての意見を書くことが多いです。どちらかというと医者の問題ではあるのですが、主治医と産業医も正しく理解できていないことがあります。

最も基本的なことではあるのですが、適切な環境調整を行うのは産業医の仕事だということです。主治医は職場の現状は把握していませんので、産業医が会社側と本人の間に入って環境調整をすすめていくべきなのです。

ですから主治医としては、具体的な就労上の意見を言うべきではありません。「接客業務は禁止」などといった業務内容はもちろん、「シフト勤務は禁止」などといった労働契約に踏み込むことは書くべきではありません。

「対人不安は段階的な改善が必要と思われる」とか、「生活リズムを整えることが重要と思われる」などといった医療上のポイントにとどめておくべきなのです。

ここら辺を勘違いしている医師は多く、マネージメントを無視して環境調整を具体的に限定されてしまうことが少なくありません。皮肉なことに、メンタルヘルスを強みにうたっているクリニックに多いです。おそらく、「メンタルヘルスに強い=明確な会社対応を指示できること」と勘違いしているのだと思います。

一方で産業医は、本人と会社の双方から話を聞いて、第三者的な立場として環境調整をしていくのが仕事です。主治医の意見をそのまま行えばよいのであれば、産業医の存在価値はありません。適応障害は職場環境と本人の適応の問題なので、産業医の真価が問われる病気です。

時に産業医は、詳細な診療情報提供書を主治医に求めることがあります。会社の関係者が困って、職場の環境調整の相談をしに病院にこられることもあります。

これも皮肉なことに、常勤産業医がいるはずの大企業で多いのですが、「産業医はいったい何をしているんだろう」という気持ちになります。ただでさえ忙しい外来診察の合間にこのようなことがあると、会社に対してもネガティブな印象になってしまうこともあります。

 

産業医と主治医の両方の立場にたって考えると、「本人と相談のうえ、適切な環境調整が望ましい」というのが一番よいかと思います。患者さんの希望を盛り込むにしても、「配置転換などの環境調整が望まれる」程度に、環境調整の余地を残した方がよいです。

 

5.適応障害の診断書の実情②-病名

適応障害という病名の場合、職場環境と本人のミスマッチが原因となります。しかし適応障害は拡大解釈されることも多く、診断書の病名はあまり意味がないことも多いです。

適応障害という病名は、どのようなことを意味しているのでしょうか。適応障害は、本人と環境の間に価値観のギャップがあってうまく適応できないことが原因となる病気です。ですから、職場環境にも問題がある可能性があることを意味します。

ストレスは多かれ少なかれどの職場にもありますのですが、適応障害はその職場環境では決定的に相いれない原因があるということを意味します。単純に仕事量が多いなどという話ではありません。ですから、環境調整が必要になってくることもあるのです。そして適切な環境調整をすれば、比較的すぐに症状がよくなっていきます。

しかしながら適応障害という病名は、実際には拡大解釈して使われています。「ストレス環境に適応できない=適応障害」として、暫定的に診断されていることもあります。もちろんヤブ医者の可能性もなくはありませんが、そのほとんどは意味があってのことです。

心の病気に対する社会の認識はだいぶ広がったとはいえ、いまだに根強い偏見があります。ですから患者さんのことを考えて、印象がやわらかい病名にすることはよくあります。適応障害であれば、適応さえできればよくなる病気というニュアンスが出てきます。

社会に向けてだけではなく、患者さん本人のために柔らかい病名にすることもあります。適応障害では、患者さんの本人の要因が大きいこともあります。ですが自分の欠点と向き合うことは、多くのエネルギーが必要となります。症状がひどいときには、そのエネルギーはありません。そういったときに、暫定的に適応障害と診断することもあります。

また精神疾患の病名は、治療経過で変わることも多いです。適応障害も、ひどくなればうつ病や不安障害に発展することもあります。また、診察室では患者さんからの情報しか主治医には入ってきません。ですが治療を続けていく中で、少しずつ患者さんの本質が見えてきます。ときには10年以上かけて、診断が変更されるようなこともあります。

これは適応障害に限らず、精神疾患の病名全般にいえることです。会社が適応障害の診断書を受け取ったら、適応障害という診断名を深く考える必要はありません。職場環境に問題がないかの確認をし、本人が希望すればヒアリングをして、現実的な環境調整を探ってください。

 

6.適応障害の診断書の実情③-休職期間

休職期間はあくまで暫定的で、長く書いてくれる方が良心的な病院です。短くなってきたのは、病状がよくなってきているサインになります。

適応障害は本来、休職して職場環境から離れれば、比較的すぐに症状はよくなっていきます。ですから、休職期間はそこまで長くならずにすむこともあります。

しかしながら先ほどもお伝えしたように、本当は適応障害ではないケースもあります。また適応障害でも、「休職したキャリア」の現実を受け入れられずに症状が続いてしまうこともあります。

ですから、適応障害だから休職期間が短いとは必ずしもいえません。適応障害の診断書には、医師から休職期間が記されているかと思います。3カ月と書いてあることも多く、「そんなに休むのか」とビックリされる会社もあります。

しかしながら精神疾患では休職は長引くことが多く、3カ月という期間は長すぎることはありません。むしろ長い期間で診断書を書いてくれる医療機関のほうが良心的です。

休職期間はその間はずっと休職しなければいけないというものではなく、よくなった場合は復職可の診断書を提出すればよいだけのことです。診断書は自費で患者さんに負担がかかりますので、期間を長く書いてあげるほうが良心的なのです。

ですから休職期間が1か月と短い場合、以下のような理由があります。

多くの場合は、診断書代を医療機関が稼ぐためです。なかには診断書は1か月しか書かないとルール化しているところもあります。

精神疾患の治療のうえで敢えて短くするのは、適応障害といっても本人の要因が大きく、社会生活を続けていくことが本質的な治療になる場合です。本人にも長期間の休職ではないと意識づけるために、あえて短くすることもあります。

また、患者さん本人が会社への印象を考えて短い休職期間の診断書を希望される場合もあります。

診断書の休職期間が意味をもつのは、これまで3か月で提出されていたのが、2か月や1か月などに短くなった時くらいでしょう。休職期間を短く設定することで、患者さんに社会復帰を促していることが多いです。このため会社側も、そろそろ復帰してくるかもしれないと準備する目安になります。

 

7.適応障害の診断書の実情④-金額

紹介状(診療情報提供書)は保険適用になりますが、診断書は自費になります。

一般的な診断書の費用は、保険の適応にはなりません。医療関係の文章で保険の適用になるのは、病院への紹介状のときのみです。

紹介状は正確には、診療情報提供書といいます。これに関しては、

となっています。ですから一般的な方はこれの3割負担、自立支援医療利用中の方は1割負担となります。

しかしながら診断書は、すべて自費負担になります。自費ですので、その料金は病院ごとの判断に任せられています。一般的な病院では、診療情報提供書を目安に料金を設定しています。このため3000円の医療機関が多いと思います。少し手間のかかる文章(保険会社書式の診断書など)では5000円、非常に手間のかかる文章(障害年金など)では10000円といったところでしょうか。

病院によっては、もっと安価で書いてくれるところもあります。とくに文章だけの診断書はすぐに書けるので、なかには1500~2000円くらいの良心的な病院もあります。

 

8.適応障害の方への職場でできる配慮

精神疾患に対して理解をしてあげてください。出来る範囲で職場環境の配慮を検討してください。

これまで診断書を中心にして会社の対処を考えてきました。最後に適応障害に対して、職場ではなにができるかについて考えていきましょう。

もっともお願いしたいことは、適応障害をはじめとした精神疾患に対して理解していただきたいということです。適応障害はどんなに優秀な人でも、誰でも起こりうる病気です。本人とマッチする環境では、普通に仕事もできるのです。

それでは会社としては何が出来るでしょうか?適応障害の従業員に対して、会社はどんなことができるのかをお伝えしていきたいと思います。

①できる範囲で業務調整する

適応障害の患者さんでは、その原因が業務内容や職場環境にあることが多いです。

ストレスの原因となっているそれらを調整することで、症状は比較的すぐに良くなることが多いです。現実的に調節が可能な場合は、配置転換や業務調整などの配慮が理想です。

社内でも評価が高い方でしたら、比較的スムーズに環境調整ができるかと思います。難渋するのが、適応障害の原因が本人の要素が大きいと感じられるケースです。

会社側としても環境調整に後ろ向きになってしまいます。産業医としてこのようなケースの相談を受けることもありますが、この場合は私は中立的な立場を心掛けています。ときには会社としての安全配慮義務はクリアするような最低限の配慮はしながら、本人の変化を求めていくこともあります。

実際のマネージメントとのバランスもみながら、状況に応じてできる範囲で業務調整をしてください。第三者である産業医を間に挟むことで、調整がスムーズにいくこともあります。

②相談しやすい環境を整える

適応障害に限ったことではありませんが、相談することはとても大切です。適応障害ではとくに現実的な悩みなので、事情を理解している人に相談できることは大きな支えになります。

相談しやすい環境をつくっていくのは従業員側でも大切なことなのですが、適応障害の患者さんに対しては会社から体制を整えていただけると助かります。

どのように相談したらよいのか、具体的に決めておいてください。「困ったら同じ部署の人に相談して」といった形で漠然としてしまうと、本人も相談ができません。

「病気のことで困ったら〇〇に連絡して。必要に応じて産業医とも相談するよ」とか、「仕事のことで困ったら人事総務の△△に相談して」といったように具体的に決めると相談しやすいです。

さらには、「会社で伝えてほしくないことは産業医の先生に相談して」と伝えていただけると理想です。情報コントロールをしっかりすることで、相談しやすくなります。

③適応障害の治療をうけていなければ病院をすすめる

適応障害は、薬物療法で症状をコントロールできることもあります。もしも従業員の方が適応障害の治療をうけていなければ、病院への受診をすすめてください。

なかにはお薬の治療を嫌がって、漢方薬やカウンセリングなどで治療をされたいという方もいるかと思います。薬を使ったほうが効果は期待しやすいですが、会社の外に相談できる場があるというだけでも重要です。

 

まとめ

適応障害では、環境調整をお願いする場合や、休職・復職の際に診断書を提出します。

本人のことだけでなく会社側の立場も考えなければ、結果的に患者さんに不利になってしまうことが多いです。

診断書は意見に過ぎないので、会社に強制力はありません。ただ会社には安全配慮義務があるため、何らかの対処は必要です。休職の診断書の場合は、ただちに休職させたほうが良いです。復職の診断書の場合は、産業医の意見も踏まえて判断します。